私は新美南吉の童話なら、「ごんぎつね」よりも、「手袋を買いに」の方が好きでした。それにしても、「ごんぎつね」って、あんな居たたまれない話はないですね。
「手袋を買いに」は心暖まる話ですが、最後にお母さんぎつねが、「ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやくのが、子どもの時には腑に落ちませんでした。
今になって思うのですが、もしもきつねが人間の世界に紛れ込んだなら、それはそれは大変でしょうね。普段、森や山や自然の中で暮らしている小さな生き物が、有象無象の溢れかえる人間社会の有様を見る訳ですから。
お母さんぎつねの言うように、人間の社会なんて、いい人もいるけれど、悪い人もいるのが本当です。
みなさんの周りには、自然の中で暮らす小さな生き物みたいなお友だちはいませんか? その人が人間社会の空気にたまに触れたら、びっくりして目を回したりはしていませんか?
最近、そんな人を見たもんですから、「手袋を買いに」のことばかり考えています。
おしまい。
おしまい。