インドの魔術…ジャドゥーの話 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 奇術の歴史を解説した本には、必ずエジプトやギリシャにおける「カップと玉」の奇術の話に並んで、インドの「ヒンドゥー・ロープ」の話が出てくる。

 

 14世紀、イブン・バトゥータという旅行家がインドを旅した時に見た魔術。空中に舞い上がったロープが雲の中まで伸びて、そのロープを人間がよじ登って行くというものだが、子ども向けの手品の本には、この魔術のトリックが図解入りで解説してあったりすることも多い。ただし、本当にその種明かしが正解なのか、そもそもこの魔術を見たという、イブン・バトゥータの記述が真実なのかどうかは、定かではない。

 

 とりあえずインドが神秘と魔法の国だというイメージは、明治以降の日本人にも濃厚だったようで、谷崎潤一郎の「ハッサン・カンの妖術」、芥川龍之介の「魔術」や「アグニの神」といった小説にも、そのイメージはよく表れている。

 

 私が子どもの時に持っていた古い手品の本には、当時、よく来日していたというインド大魔法団を率いるP.C.ソーカーというインド人奇術師の、インドの奇術はヨガを始めとする驚異的な神秘の歴史を持つインドならではのマジックだ、みたいな談話が載っていた。

 

 さしずめこれは、例えばオリエンタリズムを売りにした日本人奇術師が欧米で、私の奇術はzenの極意にも通じるものだ、などと言っている程度に、深い意味のないリップ・サービスだったのかも知れないが、この魔術団の活躍は、昭和の日本人たちにインドが神秘の国であるという印象を植え付けるのに、一役買ったのではないかと想像する。

 

 さて、インドでは奇術のことをジャドゥーと言う。英語の「マジック」とおんなじで、これは「魔法」のことも、近代芸能としての「奇術」のことも同時に指す言葉で、ちなみに呪術のことはヒンディー語で、「カラー・ジャドゥー」(黒い魔術・black magic)と言う。

 

 大道で手品を見せながらインドを旅した日本人の方のサイトの中に、インド人に手品のことを「ジャドゥー」だと言うと、それは「ジャドゥー」じゃない、「ジャドゥー」とはもっと禍々しい何かだ、みたいな反応をされたという件りがある。

 

 まあ、そんな反応をするインド人もいるんだろうけれど、普通に「ジャドゥー」が手品を意味する言葉だということは、子どもだって知っていることなので、そんなに神経質にこの言葉を使う必要はない。

 

 私がジャルダーパラ動物保護区のコテージに遊びに来た、近所の子どもたちに手品を見せたら、「おー、ジャドゥー! もう一度、もう一度!」と子どもたちは目を輝かせたものだ。ブッダガヤの日本寺のスタッフたちだって、大のおとなでありながら、「おー、ジャドゥー! センセイ、もう1回お願いします!」と、やっぱり喜んでくれた。私にとっての「ジャドゥー」は、blackとは対極の印象だ。

 

 

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