お寺は山の中にあるのが普通だったので、平地にあるお寺も含めて、大抵のお寺の名前には山号というものが付いているということは、仏教入門書などにもよく書いてある話だ。
今でも、お寺に人が来ることを「来山」と言う。お寺から出て行くのは「離山」で、どこかに出かけて、お寺に帰って来るのは「帰山」だ。
お坊さんなどが正式に寺に入ることは「入山」で、その反対は「下山」だが、ただし「入山」「下山」という言葉は、一般の方が寺域に立ち入ったり、出て行ったりする時にも使う。ちなみに住職に就任する時は、「入山」ではなく、「晋山」(しんざん)という言葉を使うのが普通。
韓国のお寺に山寺が多いのは、朝鮮王朝時代の廃仏政策で、お寺が山に追いやられたためだという説もあるが、やっぱり修行には、山中や森の中といった、人里離れた場所が適していたのだと思う。
日本の普通のお寺で「来山」という言葉を耳にする度に、私の心はインドの林や岩山に、或いは台湾や韓国の山寺に、思いを馳せる。