ターミナルケアの施設を指すホスピス hospice という言葉は、本来は教会付属の巡礼宿を指した言葉だから、「宿坊」という言葉を表す英語として、最もふさわしいのではないかと今までは考えて来たのだが、現在、使われている意味でのホスピスの歴史も西洋では古いことだし、何か他に良い言葉はないものかと考えて、何の気なしにインターネットの翻訳サイト3社を試してみたら、驚いたことに各社で違う結果が出た。
まずエキサイトでは、「Pilgrim's lodging in a temple」。これは普通に英語で宿坊を説明する時の、典型的な文章だ。
次にグーグルでは、「Shukubo」。これは英文ガイドブックの日本編などに時々見られる、単なるローマ字表記。
そして、ヤフー翻訳では、「dorter」なる英語が出た。dorter? 恥ずかしながら、聞いたことがない単語だ。dortourとも綴り、意味を調べると、「a dormitory in a monastery」とあるから、どちらかと言えば、「僧坊」に近い感じ? の、特殊かつ歴史的な用語のようで、ちなみに dorter と dormitory の語源は同じだそうだ。
英文ガイドブックのロンリープラネットの「Japan」編の accommodation (宿泊施設)の欄には、「Shukubo」という項目があり、説明文には temple lodging とある。また、他のアジア諸国のロンプラでは、仏教寺院の宿坊に関して、pilgrim's lodge、temple stayなどと表記されていることもある。
大東出版社の「日英仏教辞典」の「Shukubo」の項には、residenceとhostel、即ち住居と宿を指す普通名詞が挙げられているだけで、説明文には、元々、在家の巡礼者を泊める施設だったが、後には僧侶の僧坊 priest's quater をも指すようになったという、日本語の辞書によくある内容が、英語で書かれている。
とりあえず、日本語をそのままローマ字表記せずに、ぴったりのニュアンスの英語を見つけてみたいという欲求から、今まであれこれ考えて来たのだが、結局、日本独自の宿坊事情を表すには、「Shukubo」というローマ字表記で良いのかも知れない。
そして、ロンリープラネットにおける、いろんな仏教国の仏教寺院の宿坊の説明の中で、日本の宿坊だけが英語表現ではなく、「Shukubo」と表記されていることは、考えてみれば日本人にとっては、大いに誇るべきことなのかも知れないと、ちょっと思った。
(2012.10.25.に追記しました)
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これは南インドでの話だ。南インドでは宿泊施設をLodgeと言い、食堂のことをHotelと呼ぶ。ガイドブックにもしつこくそう書いてあるのに、ポンディシェリだったかの古びた宿で、受付の婆さんに、「このホテルは…」と言ったものだから、「ここはホテルじゃなくて、ロッジだよ!」と言い返されたことがある。
日本語では山小屋を指すことの多いLodgeという言葉が、英語では宿泊施設全般や「泊まる」という行為を指すのは、まあ分かるが、Hotelが食事をする場所のみを指すというのは、日本人的にはちょっと馴染みにくい感覚だ。
けれど、HotelもHostel(宿)もHospital(病院)もHospice(巡礼宿)も、みんなHospitality(もてなし)と同じ語源だと知って、Hotelが食堂を指すのも、何となく納得できるようになった。
ところで日本では、宿坊研究会というグループが熱心に活動されていたり、今月はNHKで「とっておきの宿坊を楽しむ!」というシリーズが放映されていたりして、宿坊人気は高まるばかりだ。
私の手元にある日本で出版された仏教英語辞書の宿坊の項には、普通の宿を指すHostel、Residence、という言葉の後に、宿坊とは何かということについての、英語の説明があるだけだ。
ちなみに世界で最もよく読まれている旅行ガイドブックである、ロンリープラネットのJAPAN編における宿坊の説明は、「Shukubo or temple lodging」だが、宿坊を指す英語としては、ホスピス Hospiceが一番妥当だと思う。
ちなみに世界で最もよく読まれている旅行ガイドブックである、ロンリープラネットのJAPAN編における宿坊の説明は、「Shukubo or temple lodging」だが、宿坊を指す英語としては、ホスピス Hospiceが一番妥当だと思う。
アジアも仏教も巡礼も大好きなので、宿のあれこれを考えているととても楽しくて、旅に出られない時でも、毎日、こんなことばかり考えて暮らしている。(2010.6.26.)