法華経の中の、第何章が好きですか? | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 これは3、4年前の話だ。インドのブッダガヤにある日本寺で、ある仏跡巡礼のグループにお会いしたことがある。私が法華経を中心経典とする天台宗の僧侶だと名乗ると、その中の若い女性が、法華経の中では何品(なにほん)が好きですかと聞いてきた。

 周知の通り、法華経は28章に分かれていて、各章のことを品(ほん)と呼ぶ。法華経は、各品を独立した経典として読むこともできるオムニバス短編集のような経典だから、宗派や人によって、各品に対する考え方や使用頻度に多少の違いがある。

 私は第1章に当たる「序品」(じょほん)が好きだと答えた。普段、習慣的に観音経や自我偈をあげていると忘れがちな、法華経がどういう状況で説かれたのかがよく分かるし、霊鷲山におわしますブッダの姿を彷彿させてくれるから好きだ。並み居る実在の仏弟子たちに続いて、菩薩、神々、鬼神、精霊、八部衆、アジャセ王を始めとする聴聞の面々の中で法を説き始める、光り輝くブッダの姿が好きだ。

 しかし、私の答えは相手にとっては大変に予想外のものだったらしく、質問者の女性は口を開けて絶句したのだが、私は私で、法華経好きの若い方は面白い質問をするものだなあと、とても意外に思ったものだ。

 その後、質問者の方も自分の好きな章が何品なのかを教えてくれたような気もするが、失礼ながら、もう忘れた。



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