位牌などによく書いてある、没年齢を表す「享年」と「行年」は、どう違うのか、それらの言葉と数え年とはどんな関係にあるのか、といった質問が、インターネット上にたくさん出ている。
それに対して、お坊さんや葬祭業者などが様々に回答しておられるのだが、どうもその内容が、懇切丁寧であればあるほど、複雑で分かりにくい。
何故かと言えば、多分それは、現代人が数え年に馴染みがなく、数え年の説明まで一から細かく書いてあるからではないかと思う。
もともと日本では、宗教や信仰、民間行事だけに限らず、年の数え方はすべて数えで行っていた。満年齢が一般的となった現代でも、古儀を重んじる宗教行事では、数え年を使うことが多い。厄年の数え方や、位牌やご祈祷札に書く年齢などは、数え年で書くのが普通だ。
従って「享年」だろうが「行年」だろうが、位牌には数え年を書くのが一般的だったのだが、お寺や住職によっては、混乱を招かないように、もしくはご自身が数え年に馴染みがなくて、満年齢を書いている場合もある。そのため世の中には、数え年を書いてある位牌と、満年齢を書いてある位牌の二通りが存在するわけだが、そのことと、「享年」や「行年」という言葉の違いには、本来、何の関係もない。
それなのに、「享年」と「行年」の意味をそれぞれ何通りも並べ、その上、数え年の意味や数え方まで長々と説明し、数え年とは本来、お腹の中に胎児が宿った時から数えて云々だとか、いろんな豆知識や感想に主観、経験談などを披露し続けるものだから、話はどんどん錯綜を極めて行くという訳だ。
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