日本であれ、アジアであれ、旅人にとって、どこでトイレに行くかはとても重要な問題だから、例えば四国の歩き遍路マップには、トイレの利用できる場所をしっかりと載せてくれてあったりする。
車に乗って仕事をする人も、トイレの確保は大変だろうと思う。日本でもタクシーの運転手さんは、トイレのある公園などを良くご存じだが、インドの運転手さんも同様だということを、先日、知る機会があった。
早朝、コルカタ(カルカッタ)の空港にタクシーで向かう時、突如、トイレに行きたくなった。もう一刻の猶予もならず、ドライバル(運転手)さんに告げたら、気弱そうな彼が慌ててスピードを上げ、幹線沿いの路肩に停車して、反対車線の交差点の向こうに、公衆トイレがあることを教えてくれた。
しかし、インドのトイレに入るには何がしかのお金が要るというのに、こんな時に限って小銭の持ち合わせが無い! その旨をドライバル氏に伝えると、胸ポケットから取り出した1ルピーを私の手に握らせて、早く行けとせき立てた。
野外で用を足すインド人を見慣れているものだから、まさか早朝の公衆トイレがこんなに混んでいるなんて思いもしなかった。手に手に水を入れたブリキ缶を持った男性陣が、いらいらしながら個室の空くのを待っている。けれどインドの駅で切符を買う時じゃあるまいし、この期に及んで順番を抜かそうとするインド人男性の何と多いことか! 一体自分の番はいつ回って来るのだろう?
というわけで、車に戻るとドライバル氏が心配顔で待っていてくれた。1ルピーのことを私が切り出そうとすると、いいよ、いいよと答えてくれたその笑顔こそは、ああ、地獄で仏だ。
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