チベット、ネパール、インドなどのチベット仏教圏を旅したことのある人なら、鳥とウサギとサルとゾウが重なった絵柄を目にしたことがあるかも知れない。このモチーフは、以下のようなジャータカに出て来る話に由来するらしい。
サーリプッタ(舎利弗、しゃりほつ)とモッガラーナ(目犍連、もっけんれん)を差し置いて、上位の席に坐ろうとした僧に、ブッダがこんな話をした。
鳥とサルとゾウが、お互いに誰が一番年長かと議論して、一本の木をいつ頃から知っているかによって判断しようということになった。
そして鳥が木の苗が植えられる前の様子を知っていたことが分かり、最年長だと認められた。鳥はブッダ、サルはサーリプッタ、ゾウはモッガラーナの前世であったことをブッダが教え、年長者を敬うように諭したという。
中野美代子氏は「三蔵法師」(中公文庫)の中で、「三畜評樹」と呼ばれるこの話が、ラダックあたりのチベット仏教圏を経由する内にウサギが追加されて、敦煌では「四獣因縁」と呼ばれるようになったのではないかと書いている。
ただし、チベット仏教圏で動物が一種類増えたことについては、もっと詳しい理由が欲しいところだ。
チベット文化に詳しい宮本神酒男氏のホームページには、このモチーフが「トゥンパ・プンシ=親睦四瑞」と呼ばれていることや、ジャータカの原話にウサギが追加されたことなどにも触れている。ただしウサギをアーナンダだと説明しておられるのは間違いで、ウサギがサーリプッタ、サルがモッガラーナ、ゾウがアーナンダの前世だというのが正しい。ちなみにアーナンダは他の三人より、ずっと若年だ。
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