
比叡山の千日回峰行を2度満行したことで知られる酒井雄哉(さかいゆうさい)大阿闍梨の講演が2009年9月29日、天台宗務庁大会議室であった。阿闍梨さんご自身のテーマでもある「一日一生」とは、今この時を真摯に生きるという意味だ。
阿闍梨さんのお話はいつも軽妙洒脱でおもしろい。講演の後に質問コーナーもあったのだが、その回答も全く当意即妙だ。
床に伏せる病になったらどうしますか? 悪けりゃ死ぬし、寿命があれば生きるよ。 どんな作家が好きですか? 本は読まない。眠くなるから。 阿闍梨さんは怒ることはありますか? ありません。 この乱れた世の中、人の心はおかしくなるばかり。どうすればいいですか? そんな難しいことばっかり考えてるからおかしくなるんだよ。
天台宗の行は決して苦行荒行ではなく、どんなに厳しく見えても、それは気づきを得るためのものだけれど、酒井阿闍梨の人柄は、とりわけそのことを体現しているかのようだ。
二千日の回峰中、最もつらかったのはいつですかと聞かれた阿闍梨さんが、それは最初の一日目だと答えておられた。何にもわからなかったからだというその理由に、なるほどと思った。物事はすべからくそうしたものだからこそ、今この時があるわけだ。
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