もしも仏法が遍く地上に弘まり、人類全員が菩提心を起こして出家したならば、人類は子孫を残せずに人間という種は絶えてしまうのだろうか? 悟りを開くには出家した方が確実に効率が良いのだから、ブッダは人類全員の完全な悟りと、緩やかな滅亡を望んでいたのだろうか?
といったような議論があるが、思考実験の命題としては大変に面白いのだけれど、そんな心配は無用だ。実際問題として人類全員が出家することなどあり得ないから。
たとえ近頃は仏教が欧米に弘まり、欧米人の中にも出家する人が増えているとは言え、地球上の全人口からすればごくわずかだ。ましてやキリスト教徒やイスラム教徒が全員改宗した上に出家することはあり得ないし、様々な文化や風土の中の様々な人種が全員仏教徒になることはないだろう。
ただ我々は、仏教徒であるか否かにに関わらず、人類全員が少しでも仏教の教えに即した真理に基づいて執着を離れ、慈悲に満ちた社会を完成するように努力するべきだ。人類全員が出家したら人間が滅びるかどうかは、その社会が実現してから議論しても十分に間に合うだろう。
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