古くはジャン・ルノワール監督の「河」(1951年・米)などもあるが、インドの出て来る西洋映画で今まで最も有名だったのは、やはりリチャード・アッテンボロー監督の「ガンジー」(1982年・英,印)だろうか。84年には「戦場にかける橋」や「アラビアのロレンス」などの“大英帝国もの”をたくさん撮っているデビッド・リーン監督の「インドへの道」(英)が公開された。
1988年にはボンベイのスラムを舞台にしたミラ・ナイール監督(米)の処女作「サラーム・ボンベイ!」が、89年には「マニカの不思議な旅」(仏)と「インド夜想曲」(仏)が製作された。転生をテーマにした「マニカ」とアントニオ・タブッキ原作の「インド夜想曲」は日本では91年に公開されたが、どちらもありがちなストーリーとは言え、リアルなインドの風景が楽しめる秀作だ。
92年にはカンボジア情勢をドキュメンタリータッチで描いた「キリング・フィールド」のローランド・ジョフェ監督が、カルカッタのスラムを舞台にした「シティ・オブ・ジョイ」(米)を発表。その後、ミラ・ナイール監督は「カーマ・スートラ」(96年)、「モンスーン・ウェディング」(20001年)、「その名にちなんで」(2006年)などの話題作、傑作を立て続けに発表する。
そしてウェス・アンダーソン監督の名作「ダージリン急行」(2007年・米)を経て、2008年制作の「スラムドッグ ミリオネア」(英)に至るわけだが、凝った脚本とテンポの良い演出、インドを旅したことのある人なら、わかるわかると思わせるようなエピソードの連続の後、すべてを浄化するラストの群舞へとなだれ込む。アカデミー賞受賞もむべなるかなだ。