京都大廻り 比叡山 千日回峰行…コースと日程 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 比叡山の千日回峰行はその九百日目に京都大廻りに入る。

 京都大廻りは通常の比叡山内を回峰後、

 午前10時頃、赤山禅院を出発。平安神宮などを通って、

 午前11時45分~午後12時5分頃、祇園の八坂神社。

 午後12時20分~13時20分頃、清水寺。その後、六波羅蜜寺、神泉苑などを通って、
   
 午後3時33分~3時53分頃、北野天満宮。その後、下鴨神社などを通って、

 午後6時から7時頃、宿坊の清浄華院に到着。

 僅かな休息後、コースを逆に取り、深夜から早朝にかけて比叡山に帰り、また日中に山内を回峰する、およそ84キロの行程だ。

 足かけ2日に渡るから、上記の時間に回峰行者の阿闍梨(あじゃり)さんが来られるのは、2日に一度となるので注意が必要だ。たとえば4月17日の日中、上記の時間に上記の場所へ来られた後、4月18日の深夜午前1時半頃、北野天満宮を通って比叡山に帰られる。そして4月19日の日中、また上記の時間に上記の場所を詣られるわけだ。

 さて、今年の3月28日に京都大廻りに入られた光永圓道師は、4月15日は、午後3時40分頃に北野天満宮の楼門に到着された。観光客の多い場所や細い道の多い京都市内を歩くのは大変だと思うのに、歴代の阿闍梨さんが同じ時間に同じ場所を廻って来られるのは、同行する息障講の方々の力によるところも大きい。先達におられたのは、光永覚道大阿闍梨だろうか。

 楼門前には修学旅行生を従えたタクシーの運転手さんが何組も道を塞いでいて、どうなることかと思っていたら、さすがは京都の運転手さんたち、ハッと気づくとすぐに子どもたちをしゃがませて、一緒にお加持を受けさせた。思わぬご縁を素直に喜ぶ中学生たちの姿は幸いだ。

 阿闍梨さん御一行は各社を巡拝後、本殿前でお勤めする。お勤め前に写真を撮ろうとして制止されたにも関らず、なお写真を撮り続ける無知な観光客もいる。それもこれも、みんなそれぞれの縁の持ち分だ。

 御一行は東門から花街の上七軒へと抜ける。初めてお加持をしてもらった舞妓さんが、髪のどの部分にお数珠を当ててくれはるかわからへんから、ちゃんとかんざしは抜いときましたと息を弾ませて、近所のお店の人に話している。それを見守る我々の一喜一憂、喜怒哀楽、娑婆世界の悲喜こもごもをよそに、阿闍梨さんは7月5日の九百日満行に向けて、今この瞬間も、心乱さずに歩いておられるのだ。





※なお、「別冊太陽 天台宗開宗千二百年記念 比叡山 日本仏教の母山」には、6月上旬に行われる「京都切り廻り」についても詳しく説明してあります。