日本の雑誌のインド特集…「照于一隅」と「一灯照隅」は別の言葉です!! | アジアのお坊さん 番外編

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 「照于一隅」は日本天台宗の祖、伝教大師最澄の言葉、「一灯照隅」は終戦の詔勅の起草に関わったことでも知られている東洋思想家、安岡正篤の言葉で、一見似てはいるが、それぞれ別の言葉だ。

 なぜこの話をしているかと言うと、日本の雑誌にインドの特集が増えだしたのはいつごろからだろうと思って調べていたら、エコ雑誌の「ソトコト」2009年2月号に、「一灯照隅」の文字を見つけたからだ。

 手元にあるだけでも2005年に「CASA BRUTUS」、2006年に「NEUTRAL」、2007年に「VOGUE NIPPON」、「pen」、2008年に「FIGARO JAPON」、2009年に「COURRiER Japon」と先に触れた「ソトコト」など、インドの特集を組んだ雑誌はたくさんあるのだが、やはりこれは急成長するインド経済への注目、女性を中心としたアメリカ経由のヨガブーム、90年代以降の海外個人旅行の定着と、癒しだとか自分探しだとかの衰えない流行などが相俟っての現象なのだろうか。

 で、「ソトコト」に「一灯照隅」は日本に古くから伝わる言葉で、元は仏教用語だとあったのが気になって何気なくネットで検索してみたら、「一灯照隅」について書いている人がとても多く、しかもほとんどの人がそれを最澄の言葉だと思っているのに驚いた。「照于一隅」なのか「照千一隅」なのかという議論があることや、「一隅を照らす」と言う言葉が現代天台宗の活動の根本理念であること、また安岡の「一灯照隅」がどの程度、伝教大師の言葉に負っているのかなどということはさて置いて、とりあえずこの二つは全く別の言葉です!!