インド方面でチベット仏教の修行を終えた真言宗のお坊さんたちは、口をそろえてチベット密教の完璧性を褒めたたえる。その是非を云々するだけの経験を私は持たないのだが、インドでヒンドゥー教の祭儀を見るにつけ、歴史的には仏教がヒンドゥー教を取り入れて密教が出来たのだなあとは思う。
日本の密教にはインド由来の所作や儀式の名残がたくさんあるが、日本の天台宗が密教を取り入れたから、天台宗から派生した日本の各宗派にも密教的な所作が少なからず残っている。
弾指(たんじ)もその一つ。人差し指を弾いて音を鳴らす作法で、護摩を初めとする密教の作法だけでなく、各宗の修行道場で手洗いに入る時に不浄を避けるためなどにも使われ、これが「爪弾き(つまはじき)」という日本語の語源にもなった。
弾指(たんじ)もその一つ。人差し指を弾いて音を鳴らす作法で、護摩を初めとする密教の作法だけでなく、各宗の修行道場で手洗いに入る時に不浄を避けるためなどにも使われ、これが「爪弾き(つまはじき)」という日本語の語源にもなった。
どうしてこの話をしているかと言うと、大阪のインド領事館で、要望が受け入れらずに厳しくたしなめられたインド人男性が、ビルの玄関を出る時に、悔しそうに人差し指を三回弾くのを見て、ああ、元々これはインドで邪を払うための仕草だったのだなあと考えたのだ。彼に幸せがありますように。