🎬『蜘蛛の巣を払う女』(2018)
THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB
ハリウッド版の前作にあたる『ドラゴン・タトゥーの女』は
現代最高の映画作家と言っていいデヴィッド・フィンチャーが監督して、
ダニエル・クレイグと、アカデミー賞にノミネートされたルーニー・マーラ主演という
最高最強のタッグで作られた最高傑作で、
ボクは映画館に四回行くほど大好きでした。
それゆえ、キャストが一新され、続編でもない本作は結局スルーしてましたが、
本作のフェデ・アルバレス監督の『エイリアン:ロムルス』と『ドント・ブリーズ』が面白かったので、
レンタル版をポチッとして観たら面白かったです!!
比較的低予算だった製作費すら回収できず
評価も低くて大惨敗に終わっていた作品でしたが、
いやいや、これは再評価されるべき作品だと思います。
元の原作『ミレニアム』を書いたスティーグ・ラーソンは
シリーズ三部作を書き終えたところで出版を待たずに亡くなってしまったので、
四作目以降はダヴィド・ラーゲルクランツという人が書いていますが、
本作はその四作目の映画化なのでストーリーは単独のもの。
ボクはラーソンの三部作を読んで、特に二作目の前半が異様に面白かったので、
今さらながら、スウェーデン三部作を観たくなってます。ノオミ・ラパスが苦手で避けてたんですが。
本作を観てあらためて思ったのは
主役リスベット・サランデルのキャラクターの素晴らしさ!
本作では「キャラ変してる」「単なるアクションヒロインになってる」的な批判をいくつか目にしましたが、いやいや、
アクションヒロインどころか逆に弱さも感じるというか
まさにピンチの連続!!!
そこを「ミッションイン:ポッシブルや007みたい」と批判してる人もいますが、
ボクは全く連想しなかったですね。
天才ハッカーの才能を駆使しつつ、弱き者は助ける
ちゃんとリスベットらしい活躍ぶりでした。
【ネタバレも含みます】
劇場公開時にこの予告を見た時↑
映像はなかなかいい感じやと思ったんですが、
クレア・フォイが演じてるリスベットがしっくりこなかったんですよ。
本編を観てからあらためてこの予告を見て気づきましたが、
前作では主役の立ち位置だった記者のミカエル・ブルムクヴィストも登場して活躍するのに、
予告では全くフューチャーされてないのは問題かも。
まぁ演じたスヴェリル・グドナソンのネームバリューが無いからでしょうが、
前作の魅力はリスベットとミカエルの関係性も大きかったので
本作にもその要素があったのは良かったです!!
フィンチャー監督の完璧な映像には敵わないものの、
アルバレス監督の映像センスも相当なもの!!
フィンチャー版と比べられるのを分かっていながら
本作を撮ったこと自体凄いことです。
今回は核攻撃プログラムの奪い合いというのが
今どきのアクション映画にありがちというか
すでに手垢が付いてる設定ではあります。
ただし、敵の組織がすこぶる強くて
リスベットが何回も追い詰められるので
最初から最後まで引き込まれっぱなしでした!
2時間未満だからテンポもいい!!
『エイリアン:ロムルス』も2時間内に収めていたので
おそらくアルバレス監督は上映時間が長くなり過ぎないように意識して作っていると思いますね。
これは長い映画が苦手なボクには嬉しいです。
続編で主人公の身内を新たに登場させる展開は本来好きじゃないんですが、
クライマックス以外は登場シーンを絞って
真っ赤なコートで、黒のイメージのリスベットと白い冬の景色との対比が絵的にインパクトあっ
てよかった!!
本作に関してはこのキャラクターは活きましたね!
演じたシルヴィア・フークスは『ブレードランナー2049』に続いて
インパクトのあるキャラを見事に体現。
この姉と向き合うラストのクレアの演技も素晴らしかったです。
結果的に本作におけるリスベットのキャラクターにクレアは合っていて良かったです。
ミカエルを演じたスヴェリルも好演で、
実際に観ると、主役二人のキャスティングが上手くハマってたのが大きかったですね!!
サブキャラも魅力的に描かれていて、
ご都合主義的なところがありつつも
サクサク進むからそれもアリでしたね。
前作ではリスベットがバイクに乗るシーンがやたらカッコよかったんですが、
今回もそれは健在。
今回は車に乗るシーンもあって新鮮だったんですが、
ここでのチェイスシーンがリスベットならではで面白かった!!
フェデ監督が実写にこだわる人だというのが本作でも感じられました。
目立ってしまう超高級スポーツカーを敢えてチョイスするセンスも好き。
リスベットには優しさがあるのがいい。
リスベットの大きな魅力は
男性からの暴力に苦しめられてる女性の味方というところにありますが、
そのキャラを逆手にとったような敵の設定もよかった。
身内を新たに登場させたらイージーな展開になりがちですが、
本作においてはそれが必然で、ストーリーの根幹にも関わっていたのが良かったです。
ロケによる映像も素晴らしいシーンばかり!!!
ロケハンのセンスも感じます!!
やはり、リスベットの独り舞台みたいにではなく
ミカエルとのコンビとしての活躍を推した宣伝にしてほしかった気がします。
ミカエルのリスベットを受け入れるキャラがあってこそ
リスベットのグイグイ行くキャラが立つんです。
ジャーナリズムとしての姿より、
男としての優しさを体現したグドナソンのミカエルも良かった!
前作の切ないラストとはまた違う余韻がありました。
蜘蛛の巣を払ったリスベットが
新たに見る景色をまたスクリーンで観たくなりました。