THE BRAVE ONE (2007)
『イコライザー』シリーズを続けて観たことで
自分の中で“ヴィジランテもの”ブームがきまして、
映画館で観た時は どちらかというと期待外れで、
しかも、(ラストが甘い)と思った記憶があった
『ブレイブ ワン』を、劇場公開時以来
16年振りに観ました。
ボクはジョディ・フォスターが好きなのと、
監督が 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』がよかった
ニール・ジョーダンということで、
ヴィジランテもの好きとしては期待値がかなり上がってて、
それもあって映画館で観た時は期待外れ感があったんですが、
今回、ハードルが下がった状態でじっくり観てみたら、
いやいや、なかなか面白かったです。
それでもラストが甘い印象は拭い切れなかったんですが、
分かった上で観たせいか、
初見時よりは受け入れることができました。
メイキングやインタビューを今さらチェックしたら、
また違った角度で観ることもできましたね。
観るタイミングによって印象が変わる、
これもまた映画の楽しさかと思います。
【※ラストまで具体的に触れます】
まずはやはりジョディ・フォスターの素晴らしさですね!
まさに女優として脂が乗り切ったタイミングで
彼女が製作総指揮も兼任した意欲作なので、
フォスターの見事な演技を観るだけでも一見の価値があります。
結婚を目前に控えた恋人を暴漢たちに殺され、
銃を手にしたことで
街の悪人を殺していくことになる主人公エリカを演じるのがジョディ。
このテのヴィジランテものは普通はアクション映画のカテゴリーに入りますが、
ジョディがエリカを演じたことによって
アクション映画というよりドラマの側面が強くなっています。
このブログのテーマも迷いました。
エリカがDJという設定はジョディのアイデアだそうで(元の脚本では新聞記者)
これが非常に上手く効いています。
以前から何回も書いてるようにボクはナレーションでストーリーを説明する手法が嫌いなんですが、
主役をDJにしたことで、ともすれば嫌いなナレーションになりかねないエリカの語りが胸に迫ってきます。
街について語るDJスタイルなので
刑事のショーンを取材することで二人の距離が近くなる展開が自然に見えました。
このショーンを演じるテレンス・ハワードは好きな俳優で、
いまだに『アイアンマン2』に出演しなかったのが残念なんですが、
久しぶりに観て、彼の演技も素晴らしかったことが分かりました!
この、エリカとショーンの関係性がじっくり描かれているところが
非常に重要なポイントと理解すれば、ラストも 初見時よりは許容できました。
二人の間に、少なくともショーンの方は
エリカに恋心を持っていたのが今回の鑑賞でハッキリわかりました。
思い返せば、なぜ当時期待外れ感があったのかというと、
恋人を殺された主人公の復讐ものとして期待したところがあったのに、
半ば成り行きで処刑人になっていく展開が
期待したものとは違ったからやと思います。
つまり、期待したよりは地味な展開ともいえるんですが、
今回はそれを分かった上で観たらとても良かったですね。
むしろこういう展開が本作の深みにつながっていました。
ジョディのインタビューで気づいたんですが、
銃を持つことによって安易に人を殺せてしまう恐ろしさも描いていたことが分かりました。
最初は成り行きでも、
徐々に意識的に処刑人になっていく様が見応えありましたね。
そして、もう復讐ものにはならないんじゃ?と思ってたら
クライマックスはきっちり復讐ものにもなっていたのがよかったです。
今回一番印象的だったのは、
エリカの犯罪被害者としての苦しみを丁寧に描いていたところです。
ストーリー的にも映像的にも、
酷い暴力の犠牲になった人間のその後の苦しさをしっかりと描いています。
外出するのも怖い、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはこういうものなのかと、
その苦しみを想像させるほどの描写でした。
ジャンルムービーとしてのヴィジランテものなら
その葛藤が復讐のカタルシスにつながっていくんですが、
本作ではそこに真摯に向き合うことによって、
爽快感は無いものの、
相手が悪人だからといって人が人を殺していいものなのか?という
至極全うなテーマに正面から踏み込んでいるところに
今回は引き込まれました。
それは、観る前に期待した映画的カタルシスとは真逆のものですが、
ボクが観てきた他のヴィジランテものにはない
本作ならではの見所と、今回は感じることができました。
エリカが殺人を重ねることで
心の平安を取り戻しているように見えるのが恐ろしくもあり、
ここをエスカレートさせればエンタメ映画として面白くなったはずですが、
エリカの 自分の暴走を止めてほしいと思ってるかのような姿がまたリアルでした。
エリカに明らかに怪しい異変が起こっていることに気づきながらも
あくまでも優しい近所の女性も今回は印象に残りましたね。
エリカとショーンの関係性を理解した上で観ると、
今回もやはり甘いと思ったとはいえ、
ラストをだいぶ受け入れられるようになりました。
ショーンは三年越しの捜査で逮捕しようとしていた
暴力的で酷い悪人を結局捕まえられなかったので、
法では裁けない悪があることを苦々しく思っていたから
エリカがやっているであろう裁きに理解を示していたのがよく分かりました。
その悪党に直接裁きを下してくれたエリカに感謝さえしている印象を今回は受けました。
ここらへんの受け取り方で
ラストのショーンの行動にも今回はだいぶ納得できました。
正当防衛や復讐のためとはいえ
数人の人間を殺した主人公を
ここまで明確に救うラストは珍しいというか
この手の作品では観たことない展開に初見では驚き、
安易にも見えてしまいましたが、
一般的な倫理観に照らし合わせたら
この主人公にもある程度の裁きが下されても仕方ないのに、
ある意味気持ちいいくらい主人公の行為を容認したラストには
監督の意志を感じましたね。
批判を覚悟の上でエリカの行為を認めていると思いました。
安易にも見えたと書きましたが、
あらためて本作のラストを嚙み砕いたら、
エリカは捕まらないことによって
その罪を自分自身一生背負わないといけないと捉えた時、
一度体験してしまった恐怖が消えないことも合わせ、
エリカは街と人間の暗部を見てしまった人間として、
そのことと一生向き合い、
そして それを語っていかなくてはならない存在になったのだと思いました。
自分の中の見知らぬ他人―
それが今の自分の姿‥