To LIVE and DIE in LA 『L.A. 大捜査線線 狼たちの街』 (1985)
独特な雰囲気と映像に冒頭から引き込まれる、
派手なアクションはない前半から、主人公の連保捜査官チャンス(ウィリアム・L・ピーターセン)の執念の捜査から目が離せない、これこそ本物のポリス・アクション!!
公開された三十年前はまだ珍しかったバンジージャンプに興ずるチャンスが印象的でしたが、
この序盤のシーンですでに チャンスが無鉄砲で、‘病んでる’かのような雰囲気を感じるのがミソ。
だから、相棒が殺されてからの捜査は正義感というより復讐のためのみに動いているように見え、
そのジリジリした雰囲気が他の幾多のポリス・アクションとは一線を画すまさに傑作!
先日観た『ストリート・オブ・ファイヤー』と同じく、たまに無性に観たくなる
自分の中では“80年代を代表する傑作”のひとつです!!
チラシも80年代臭ある。むしろ 70年代っぽいか。
80年代に流行ったワン・チャンの音楽も当時の空気感を漂わせる。
チャンスの復讐の相手になる ウィレム・デフォー演じる紙幣偽造犯マスターズのエキセントリックなキャラクターも際立ち、
ピーターセンとデフォーの気の入った演技はただのアクション映画の範疇を超えるレベル。
デフォーは『プラトーン』でブレイクするまだ前。
当時は無名やったはずのジョン・タトゥーロまで脇で登場してるから今観ると驚く。
ホラーの名作『エクソシスト』や同じくポリス・アクションの傑作『フレンチ・コネクション』の名匠ウィリアム・フリードキンが監督やから、出演者の気合いも尋常じゃないように見えます。
今となってはアナログな印刷技術ですが、だからこそマスターズが偽造紙幣を作るシーンが
まるでひとつの芸術のように見えるところもミソ。
悪党との取り引きにも自分なりのルールをきっちり持ってるところに、悪人なりの美学を感じるから、敵役として不足のないオーラを放ちます。
面白いのは無鉄砲なチャンスの新たな相棒になるブコビッチはいたって普通の警官なところ。
それでいて いい奴やから無茶なチャンスの提案も相棒として受ける。
演じたジョン・パンコウは『摩天楼はバラ色に』も印象的やった俳優さんで、本作でも濃い二人の横でしっかりと存在感を残しているのはさすがです。
こういうアングルは珍しいと思う。
『フレンチ・コネクション』で伝説のカーアクションを演出したフリードキン監督らしいこだわり!
普通の警官に見えたブコビッチがヤバい状況にハイになる感覚もなんか恐ろしい。
チャンスも半分ラリってるように見えてくる。
本作のテーマはまさにここにあるように思う。
想定外の状況に追い込まれることによって浮き上がってくる【人間の狂気】の部分。
その極め付け的なシーンが
ピンチにおちいったチャンスが高速道路を逆走して逃走するカーアクションで
もはや「伝説」と呼べる凄まじさ!!!
これは つい映像技術に逃げてしまいがちな現代では絶対に再現できないであろうアクション!!!
状況設定もスタントもヤバすぎる!!!
そしてさらなる驚きは主人公のチャンスがクライマックスでアッサリ殺されるところ。
しかも それはマスターズとの一騎打ちとかではない正に不意打ち的な死に方で、
最初映画館で観た時は心底驚いた‥。今は普通にあるけど、当時はそんな掟破りな作品はなかった。
しかし、こんな死に方こそ 命懸けの捜査の中では実はリアルであり、この展開でさらに本作の印象は強烈に心に刻まれることになりました。
最初観た時は ピンとこなかったラストシーンも
二回目以降は意味がよく分かる。
主人公が死んでも L.A. の街は生き続ける。
でも、常に死の危険はあり、人間の狂気が無くなることはない。
三十年以上経った今の方が、その狂気はさらに人間の暗部に入り込んでいるような気がします。