8月28日に最新アルバム「Shy,how are you?」のリリースを控えたHi,how are you?の原田晃行さんにアルバムの予習としてA to Z方式でインタビューしました。
(原田晃行:1992年4月16日生まれ 山形出身)

まずは「Shy,how are you?」に収録されるこちらの楽曲をBGM代りに。

A - ATA TAK

原田:ATA TAKは出てるタイトルどれもアートワークが特に素晴らしいですよね。奇妙なのに可愛いらしい感じ。好きなのはPYROLATOR、ANDREAS DORAU辺りが特に。

-ANDREAS DORAUと言えば最近、宮古ミーティングス名誉会長からちょっとした情報を貰いましたね。

原田:そうなんですよ!電気グルーヴ「N.O.」の元ネタはANDREAS DORAUの「TULPEN UND NARZISSEN」じゃないかっていう。

-歌詞も遠からずで。
(件の楽曲が収録されたDIE DORAUS UMD DIE MARINAS「BLUMEN UND NARZISSEN」の国内盤歌詞カードより)

原田:意識して聴いてみたら確かに似てるんですよ!その発見もそうなんですけど、名誉会長もドラウファンであることを知ってブリーフ裂けました!もう縫いましたけど。由利徹のマネで。
(名誉会長が「少年メリケンサック」で共演したピエール瀧の印象は「座ってるだけで怖かった」だそう)

B - バンド名

原田:バンド名は大事ですよ!好きなのをざっと挙げるとORANGE JUICE、THE JESUS AND MARY CHAIN、AMBITIOUS LOVERS、SOFT MACHINE、BLIND MELON。普通に2単語の組み合わせが好きなのかも。日本では断トツでLAUGHIN'NOSE!日本のパンク史を振り返った時、明らかに「今までと違うセンスの人達が出てきた!」って感じしますもん。
(LAUGHIN'NOSEという名前は初期メンバー、アカベーによって命名された)

C - カッティング奏法

原田:影響と言うと吉川晃司のバックとかで弾いてたアベフトシ。あとWEDDING PRESENTでしょうか、やはり!よく比較されるBIG FLAMEは似てると言われてから聴くようになりました。速いですよね~!
(「BIG FLAMEはTHE GUAYSのヒロシさんも好きなんですよ」と原田さん)

D - ダダイズム

原田:ダダそのものよりTHE RESIDENTSやDER PLANの孫影響という感じですね。大学でデュシャンについてやる授業とかもありましたが、音楽を介した方がより純情にビシバシきました!強いて挙げるならマンレイという人のGLASS TEARSという写真の作品が、DAMON&NAOMIのジャケに使われてて印象深いかな。ブハハハ~!

E - 映画

原田:この夏、オススメの映画は「TANTANたぬき」「竹取物語」「山田ババアに花束を」「ジュリエット・ゲーム」「いこかもどろか」です。

-「竹取物語」って沢口靖子の?

原田:そうです!東宝SF超大作の!えっ?「あぶない刑事」ですか?あれはオールシーズン。昨日も観ましたよ。
(原田さんは「勝手にしやがれヘイ!ブラザー」の映画化も熱望している)

F - FLYING LIZARDS

原田:1stはHi,how are you?ファン必聴盤です!低予算!段ボールドラム!有名曲の茶化しカバー!どこをとっても好奇心をそそる。こういうバンドが存在していた事が勇気になるというか。「THE SECRET DUB LIFE OF THE FLYING LIZARDS」というダブアルバムがけっこう直球に(とはいえ少し変)ダブやっててその肩透かし感もらしい!

G - 現代音楽

原田:現代音楽は高速道路走るときに合うのではと思っています。特にミニマルで長尺の曲は長距離移動に合うと言いたい。あとカーステで聴くと音の配置が体感できるので面白いです。先日の出張でもテリー・ライリーのA RAINBOW IN CURVED AIRを聴いていました。

H - ヒプノシス

原田:大好きですね!最近の趣向だと10ccのアートワークが。羊ジャケ、顔新聞紙、海のyeahネタなど。「おしゃべり電話」のレーベルもめちゃくちゃかっこいいんですよ!10cc以外だとUFOの風呂場のやつもかっこいい!
(10ccの4thアルバム「びっくり電話」。原田さんには何故か「おしゃべり電話」とインプットされているようだ)
(実はこの2人、THROBBING GRISTLEのジェネシス・P・オリッジとコージー)

I - インスタグラム

原田:一時期はインスタライブでファンレターを読み上げたり、泉アツノのモノマネでお尻からウズラの卵を噴射したりしてましたが、最近はレコードやCDを音付きであげている人のを見て参考にしてる感じですね。sheetnoiseというアカウントは参考にしてます。あとは名越美香と。

J - ジャンク・ギター

原田:ハードオフで安いのがあるとついつい買っちゃいます。CASIOのDG-20とかはインテリアも兼ねて。でも意外と音は出るんですよ。以前、買ったSGも背面が割れているだけだったので貼りもので誤魔化してステージでも使ってます。
(EP用の袋を貼りつけて、中身はその日の気分で変えられる仕組みになっている)

K - KiliKiliVilla

原田:CAR10の2ndとNOT WONKの1stが出た時、「新しい波が来てるんだな」と俯瞰的に見てました。

-Hi,how are you?とKiliKiliVillaの関わりにはWHILE WE'RE DEAD.への参加、Hi,KillerpassのEPもありますね。
(ディスクユニオンのポップに書かれた「相乗効果はあまりない」は、もはや語り草)

原田:最近のKiliKiliVilla絡みだとCAR10永井とのグッズ製作は、思ってた以上にスムーズにやれて楽しかったので、冬にまたやりたい!今回断念したアイマスクもいつか実現したいです。

-アイマスクは明るい所でも寝れるから便利ですね。

原田:なるほど!そういう使い方もありますね!自分はアイマスクした状態で女性から口汚く罵られるのが好きなので、それ用にと思っていたのですが。

L - リーダー

原田:リーダーが最近ソロ曲を急にネット上にあげたのですが、非常に良かったんですよ。サックスも特訓中とのことですし、今後はリーダー作詞作曲の割合が増えていくのではないかと踏んでます。

-リーダーの作った歌詞がちょっと原田さんっぽくて「やっぱりHi,how are you?の曲が好きなんだな」と思いました 。

原田:それはHi,how are you?の録音をやってくれてる馬場さんにも言われました!単純に二人とも春川ナミオの世界観が好きなので、そういうのもあると思いますけどね。

M - 宮古ミーティングス

原田:宮古ミーティングスは明大前の沖縄居酒屋、宮古で音楽談義をする集団なんですけど、今や自分の軸になっていると言っても過言ではない!メンバー内でのトレンドやあの場で話していることが次作への構想へと繋がっていくことが多々あるので定期的に結集したいものです。
(8月15日~16日にかけて宮古ミーティングスの夏期合宿も行われた。右からキーマカリーズのゴツローさん、すばらしか加藤さん、原田さん)

N - NIGHT ON THE PLANET

原田:この曲、皆さんにご贔屓いただいているのですが、実はシングルも切ってないし、PVも作ってないんですよね。でも人気曲ですから再録する機会があればそんときにPVを作ろうかと!ちなみにお蔵入りしてる工藤さん作の映像が実はあります!

O - 大高洋夫

前回のインタビューで原田さんが大高洋夫の名前を出した事に少し反応があったんですよ。

原田:「子供、ほしいね」もそうですし「やっぱり猫が好き」なんかも部屋が舞台じゃないですか。なのでHi,how are you?を聴いてその2作品を連想する人は多いみたいですね。特に「?LDK」の頃なんかはよく言われました。
(「子供、ほしいね」でうららの兄役を演じた三谷幸喜は衝撃的な面白さだった)

P - プロデューサー

原田:プロデュースしてもらうなら…Hi,how are you?が持つ歌謡曲的な俗っぽさと屈折したビザール感とその両方を理解してくれる人…そう考えると1周まわって1stと同じ曽我部(恵一)さんがいいかもしれない。本格的な打ち込み導入を考えているので掟(ポルシェ)さんともやれたら…。なんにしろ、もしプロデューサーを立てるとしたら、共同作業というより完全に委ねるかんじでシングル2曲とか委託してみたいですね。

-原田さん自身が誰かをプロデュースするとかは?

原田:PVに出てもらった影武者子の人気が凄いので「APHEX TWINみたいな女の子」としてプロデュースしてみたい!
(「APHEX TWINみたいな女の子」は大沢逸美の「ジェームス・ディーンみたいな女の子」とかかっていると思われる)

Q - クエスチョン

原田:読んでる人に質問ですか?打ち込みの参考になりそうなアルバムを教えてください!聴くとはかぎらないけどな!!あとキャプテン・センシブルが「MACHINE GUN ETIQUETTE」の頃に着てたホワホワしたセーターが売っている所を知っている、もしくは作れる人も連絡ください!着るとはかぎらないけどな!!
(「Shy,how are you?」の1曲目から2曲目への繋ぎはDAMNED「MACHINE GUN  ETIQUETTE」を意識したとのことなのでそこも聴き所)

R - レコーディング

原田:ちょうど何日か前に「Shy,how are you?」の完パケ盤を聴いたのですが、馬場さんMIXの妙はあります!実は結構左右に振ってたりするんで!なのでスピーカーで聴いてもイヤフォンで聴いても面白いですよ!

S - SPARKS

原田:「Shy,how are you?」のブックレットの中でオマージュしてるくらい好きです!どの時期も良いのですが、意外に見過ごされがちな近年の「HIPPOPOTAMUS」というアルバムもSPARKS節炸裂で最高!まずカバなめのジャケ!この曲が特に好きです!
(Hi,how are you?でもSPARKSのようなシアトリカルな曲展開を検討しているそう)

T - 高橋留美子

原田:高橋留美子作品で好きな女性キャラは
しのぶ(うる星やつら)、なびき(らんま1/2)、八神いぶき(めぞん一刻)といった感じでしょうか。というか高橋留美子先生自体が理想のタイプ。

U - うしろゆびさされ組

原田:ロカビリーぽい曲からリズムボックス歌謡、ファンカラティーナぽい曲もあるのでかなり教科書になってます!曲名の突飛さも。ここ最近のHi,how are you?のモードは「LIASONS DANGEREUSESのトラックにうしろゆびさされ組の歌を乗せる」なんですよ!
(秋元康、1987年のインタビューより。うしろゆびさされ組に限らずおニャン子クラブ関連の曲タイトル、コンセプトは「夕やけニャンニャン」のディレクター、笠井一二が主に考えていた)

V - ボーカリスト

原田:ボーカリストと言われて連想するのは「ネオアコのバンドってあのさわやかな演奏の割にボーカルは低い声が多いな」ということ。エドウィン・コリンズしかりロディ・フレイムもやや低め。ジュリアン・ヘンリーが高めなのは小山田とも通じてくるのかなと思ったり!とかまあ色々言ってますが、一番好きなボーカリストはCAR10の川ちゃんです!というか他にいます?
(ある打ち上げで川田さんは神妙な口調で「山形に本物のキチガイがいる」と原田さんのことを話していた)

W - WEEN

原田:まず14歳で結成してるというのが流石!訳の分からない曲の連打の中に急に名曲をサラッと入れ込んでくるアルバムの構成含め最高!ビザールポップの手本として見習いたい2人組ですね。Hi,how are you?ファンには「THE MOLLUSK」がオススメ。ジャケもグッドセンスだし、内容もポップで良いメロディ詰まりまくり!!
(宮古ミーティングスの間では「深海魚」と呼ばれている名盤)

X - クリスマス

原田:この時期にクリスマスってよっぽど「X」がなかったんですね。X-101とかもありますが、話すほどでもないし…。

-デトロイトテクノはあまり?

原田:少し聴きますけど自分たちの音楽への影響はないですね。むしろシカゴハウスの方がRAW VIBEを得られます。シカゴハウスとダニエル・ジョンストンのメンタリティの親和性は石野卓球も言ってるんですよね?
(石野卓球、1994年のインタビューより)

Y - 山本アキヲ

原田:アキヲさんにはいつもマスタリングをお願いしているのですが、作業が迅速で本当に1009な存在!伝聞なので詳しく話すのは控えますが、Hi,how are you?の事も高く評価してくださってるらしくとても嬉しいです!

Z - ZIN-SAY!

原田:後期より最初の方のいかにも宅録な頃が好きですね。ずっとポンキッキーズを観てたのでピエール瀧がこういう音楽やってたって知った時は嬉しかったですよ。逮捕のニュースも電気の「FLASHPAPA MENTHOL」を初めて聴いた時の衝撃に比べたら別に大したことじゃないです。彼らに纏わるトピックが彼らが作る音楽の衝撃を超えることはない!
(「ナゴムだと他にマサ子さんが好き。あっ!マサ子さんもポンキッキーズ人脈ですね」原田さん談)

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