熊屋酒造有限会社の庵谷晴男社長と出会ったのは、2022年10月15日・16日に開催されたおかやま「雄町と地酒の祭典2022」です。

 その日は、主催の岡山県酒造好適米協議会・JA全農岡山・岡山県酒造組合などが、「#オマチスト」ピンバッジを作り、販売されるとの情報を日本酒ピンバッジコレクターの先輩に聞き、訪れていました。

 

 私の手元に、当日に2022 Miss Sake Okyamaと撮った写真が残っています。その時は、私がMiss Sake岡山に一緒に写真を撮ってくださいとお願いしたところ、するすると妙ににこやかなオッチャンが横に並び3人で撮った写真になりました。???と思ったのですが、それが、庵谷晴男社長だったのです(笑)。よく写真を見ると、私がMiss Sake岡山にお声掛けしたのが、熊屋酒造さんのブースの前で、お名前のごとく、明るく晴れやかな笑顔の庵谷晴男社長でした。

 

 その後、大阪梅田の浅野日本酒店のイベントで再会し、日本酒ピンバッジの依頼を受け、できたのが2種類のピンバッジです。

 

 江戸中期1716年に三代目当主の庵谷伊七(いしち)が、熊野神社から「熊」の一文字をもらい、「熊屋本家酒造」として酒造業を創業しました。庵谷(いほりや)家は紀州熊野の出身で、熊野大社の分社の神殿を現在蔵元が所在する場所(岡山県倉敷市)近くに建設する際の人足として移住してきたそうです。

 その熊野神社の裏山には、二つの大きな霊水の井戸があり、地下50~60mから湧き出る伏流水で、水脈の違いから一方は軟水、もう一方はやや硬水と水質が異なっています。仕込み水にそれぞれの水をブレンドし使い、その比率は企業秘密との事ですが、発酵力を高めるのに、やや硬水(硬度4.5)を酛仕込みに使い、軟水(硬度2.6)は醪造りに使用しているそうです。

 

 南部杜氏である晴男社長にお話を伺った時に、別の酒蔵で修行中には、蔵の経営は大変なので、継ぐ気はなかったのだが、どうしても自分が作りたいお酒というのが心の中でできてきて、そのお酒を造るために実家の酒造を継いだそうです。そんな社長が心を込めて仕込んだのが「飲み手にずっと飲みたいと言って頂けるお酒」「最初に口の中で広がるお米の旨みと潮が引くようなキレの良さをもったお酒」飲み易い酒で、現在の熊屋酒造の年間生産量は420石、主に純米酒に力を入れています。

 ピンバッジは山田錦を40%まで磨いた「伊七 大吟醸酒」でフルーティーなお酒です。

 

 「庵」は熊屋酒造と酒類専門商社モトックスが岡山のテロワールの素晴らしさを表現するため共同開発したお酒で、「庵」純米大吟醸は旧赤磐地区に隣接した土地に圃場を構える契約農家の「雄町」優良米を使用しています。

 ピンバッジは庵 備前雄町 純米大吟醸 原酒 磨き三割八分ラベルをデザインしています。

 

 4大酒米といわれる「山田錦」「雄町」「五百万石」「美山錦」の中でも、晩稲(おくて)の「雄町」は、6月中旬に田植、11月上旬収穫と遅く、病害虫にも弱く、稲の背丈が高いので倒れやすく、栽培が困難といわれています。しかし、「晴れの国」といわれる岡山県は、年間二千時間と日照時間が長く、降水量は少なく年間千百ミリ程度で日本有数のテロワール(個性的な土地柄)で、気候風土が雄町の栽培に適しています。

 

JA全農岡山オマチスト認定ピンバッジ 関係者のみに配られたものです。

 

 酒造好適米の中で優等生が「山田錦」なら、野生児に例えられる「雄町」、栽培と醸造の難しさの先には、熟成によりその良さを見せ、個性ある複雑な味わいの酒、雄町の酒を愛する「オマチスト」と呼ばれるファンも増えるのは自明の理ですね。

 

 

 

出典、参考文献・HP

熊屋酒造HP

岡山酒造組合HP

JA全農岡山HP

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