東和酒造さんは1717年(享保二年)創業の京都丹波の福知山市にある小さな酒蔵です。小仕込みで、一年間で百石あまりしかお酒は造られていません。

 創業から300年を超える歴史ある東和酒造さんですが、初代今川新六が京街道・生野宿近くに茶屋を創業し、その後に清今川酒造場として酒・醤油の製造を始めました。しかしながら、1977年(昭和52年)突然の井戸枯れにより酒造りを休むことになり、製造委託の道を進みます。しかし、2008年(平成20年)に蔵元の長女で11代目となる今川純さんが杜氏になることを決意し、各地で修業や研修を受け2011年(平成23年)33年ぶりに自家醸造を再開しました。

 

 東和酒造さんのお酒の会で、ご主人である飯田 玄さんに伺ったのですが、奥様で杜氏の今川 純さんと出会ったのは、日本で唯一のお酒に関する国の研究機関である酒類総合研究所で、お互い蔵の跡取りとして勉強中だったので、結婚しようとなったときに、どちらの蔵にはいるのか、目に見えない綱引きがあったそうです。結局は一目ぼれした玄さんが福知山に来たそうで、現在は長野にある玄さん実家の蔵は弟さんが継がれているとの事でした。東和酒造さんの現在は、ご夫婦で二人三脚の酒造りが行われています。

 東和酒造の店の近くには、鯰川が流れ、ナマズの酒屋として親しまれてきました。地震予知といった先読み能力が、商売繁盛につながるとして、ロゴマークとして、ラベルのイラストなどにナマズが描かれています。

 

 復活後の東和酒造さんは、総米500㎏以下の仕込みに限定し、あえて量産せずに少量多品種を造る体制をとっています。また、お酒に使用する米も地元福知山で、酒米「山田錦」「五百万石」飯用米「キヌヒカリ」を契約栽培し、そのお米は「六歓」や季節限定酒の原料となっています。

 酒造りは伝統にこだわり、機械に頼らず杜氏を中心とした蔵人の手作業で行い、搾りは昔ながらの木槽(きぶね)で絞っています。さらに、出来上がったお酒はすべて瓶貯蔵し、一本一本丁寧に熟成、管理をしています。

 主銘柄の「福知三萬二千石」は、東和酒造さんで長年造られてきた福知山の地酒で、三万二千石とは長く福知山城の城主を務めた朽木家の石高で、福知山音頭の一節にもなっている福知山の人にとっては馴染みの深いお酒です。

「~山家一万 綾部が二万 福知三万二千石 明智光秀 丹波をひろめ ひろめ丹波の福知山~」

 杜氏の純さんが一から造りあげた銘柄である、純米酒「六歓(ろっかん)」の名前には、人の5感にお酒を飲んだときの歓びを加えた「六感」と、地元六人部の米、水、空気、人だけでつくりあげた「六人部の歓び」という意味が込められています。とことん地元にこだわった地酒を作りたいという想いから丹精込めて完成させたお酒です。

 ラベルは、染色作家のいとこ、弓場直子さんが純さんの想いを汲んでデザインしてくれたもので、女性らしい優しさと華やかさのある切り絵で、お酒の味は、このラベルのイメージに合うように試作を重ねたと言います。

 「六歓はな」テーマは香り、六歓シリーズ第一弾の特別純米酒です。花咲くように香り豊かになるように長期間丁寧にじっくりと醸しました。ラベルにはお酒をイメージしてたくさんの花を咲かせています。

 

出典、参考文献・HP

東和酒造HP

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