「歌川広重が、主人公のドラマやってますよね?」
と、お客様が私が着ているTシャツを見ておっしゃった。
そう、歌川広重の絵
『江戸百景〜山谷堀夜景』を観て
驚きと衝撃で、アレンジTシャツを1年かけて2019年に作ったのだ♡
私の店ピンコパリーノのある場所は、
2度に渡って(関東大震災・東京大空襲) 焼け野原になって、死者が多かったので人が寄りつかなくて、公園と競技場になっている地域で、
ビル自体も見るからにシャッターボロボロ
大家さんも社屋としても何故か30年間使っておられず。
私に貸すと決めてから半年ありましたが、掃除もされず不用品すら運び出すこともなく時が止まっている状態だった。
契約書も以前の大阪のビルのものを例にコピーして見せたのに入居までに間に合わせてくれていなかった。
「どうして何もしてくれないんだろう?」
引っ越して来てしまってからそう思った。
でも、大家さんはお客様だったし、
私が東京に来るチャンスを与えてくれた人だから
リスペクトしていたかったので、無駄に苦言は言わない様にして、人を信じていた。
「ビルに住めますよ」と
大家さんは住居として勧めてきたけれど、
引っ越してきたものの
埃まみれで生活できず、
困り果てた結果、
すぐ近くにマンションを借りた。
気管支がやられたのと、たまに大家さんの知人女性が勝手に男性を連れて来るのと鉢合わせしたり、貸していない建物内のフロアをウロウロする事があって気味悪かったから。
管理人さんもいない。管理会社もない。
後に3年程、どこからの雨漏りかわからない原因の漏電や下水管を50数年掃除していなかったことによる水詰まりや逆流による洪水、ガス管の老朽化によるガス漏れ、コンクリートのひび割れから穴を掘ってネズミが入って来る惨事、色々思い出すとキリがない…
大家さんの関係者が、口を滑らせたのか…
「君は何故来たの?馬鹿だねえ。あんな場所、死地帯だよ、苦しむよ、気の毒に」と、引っ越してきたばかりの私に言った。
酷いな…詐欺かよ…。
心を塞いでしまったけれど、言っても無駄だろう。
今更、私も引き返せない。
大阪の店はもうない。テナントには別の人が入ってしまった。
他にもトラブルまみれの3年。
石の上にも4年だ。と思うことにしていた。
相当疲れていたその頃に出会った絵だった。
この絵には、焼け野原になる前の
浅草が過去1番華やいでいた江戸時代後期の様子を
広重が描いたもの。
「死んだ地域」とか「浅草に7丁目なんかないよ」と浅草の人にも言われてきたのに
この絵には、ウチの店のある川沿いにいくつも大きな料亭が並ぶ様子を描写している。
「COOL‼️」
これを観た時、
その後調べて出て来た事実に
感涙した事を共有できる人はいなかったけれど、
嬉しかったその気持ちをTシャツアートにした。
ドラマ『広重ぶるう』には、
この山谷堀夜景作品まで出てくるかどうかわからないけれど、
『東洋のモナリザ』という異名もあるので、
登場させるならどんな風に表現されるのか楽しみ。
今は、TシャツSサイズ数枚しかもうないけれど、
欲しい人居たら新しく増刷するよ。
ここを出ていくと決めた私を
最後に広重が見送ってくれるようだ。
あの頃、私を救ってくれた最高の画家。
優しく感受性の強い人柄が滲み出る作品達。
ゴッホやモネにも影響を与え時空を超えて私を助けてくれた、絵筆を持つお侍さん。凄い奴なんだよ。
ドラマ、続きが楽しみだ♡