べッぺ・ファリナッソ(愛称ポール)と呼ばれる男がいた。ブラの人だ。質の良いBaroloをイタリア中に広めた第一人者である。東欧やスペインに狩に出掛け、ベカスをしとめるのが趣味だった。私達モンフォルテのオステリア姉妹もいつも可愛がってくれた。国籍なんて本当に気にも留めない人だった。あて逃げされた私の車の修理代を持ってくれると言ってくれ、女なのに見てくれが悪い物を気にしない私に美しさを保つ事が女の仕事だと気付かせてくれた。誰もが彼の偉大さを知っていて、仕事の経歴だけでなく、その男気を絶対的に敬っていた。
彼のお葬式のカードにはテーブルいっぱいのグラスと彼のニヒルな笑顔と『笑え!笑え!笑え!笑うのにお金はいらん!』という生前の口癖。
バローロやバルバレスコ、ランゲのワイン達はこの男がワイン商シンボルとなり広まったから幸運を遂げた。ランゲ美し郷。美味しいだけでない。この地このワインが王座にあるのには十分意味があるのだ。バローロを運んだこの男の名を、今ネット検索しても出てこない。しかし、ランゲの重鎮達は誰もが彼を忘れる事はない。歴史というものは語り継がれて人の心に生きている。
(写真は、2002年の夏アルプスに一緒に出掛けた時、ファリナッソさんが摘んでくれたエーデルワイス←本当はいけないこと…。)
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