赤い観覧車の横からビルの暖房の湯気が立ち上る、そんな景色が扇町公園ののどかな空間から見える。
このキッチュな景色が、私は大好きだ。
昼も夜もとっても可愛い、大阪で多分私が1番可愛いと思う景色。
今度、2月にイタリアから友達が来た時に必ずあの観覧車に乗せてあげるんだ。彼女のお父さんもお母さんも一緒に来る皆も、全員あの観覧車に乗せてしまうんだ。といつも、この景色を見るたびに繰り返し同じことを思っている。
1週間程前の夜中3時を回ったところ、私は変な人に道端で遭遇した。
着膨れしすぎてあきらかにオカシ過ぎるドラえもんのような体つきの女性を見かけた。(変な奴。)と心の中で思っていたら、声をかけられた。こういう時間に道端で声をかけられると、本当にびっくりする。
(なんやねん)と自転車を減速するものの止まらず聞き耳をたてると、「テレカとお金とこうかんしてくれませんか?」と言っている。あっけにとられる間もなく、隣を歩いていたリヤカーのおっちゃん(ツレではない。)が高らかに声をあげ笑い始めた。ので、ぎょっとした私の気持ちも緩んで、一緒になって笑って通り過ぎた。
ところで、100m程通り過ぎてからふと思った。
あの人は、テレカが必要なのか?それなら、あげてもいいずっと使っていないものがある。
電話したいんだったら、大変じゃん!と思って来た道を戻った。
戻りながら、実はレズでテレカを渡す時に腕をひっぱられたり、変質者でナイフで一突きされたらどうしよう!君子危うきにちかよらずって言うし・・・と思っていたが、彼女の前まで来て少し距離を保ち、「ねぇ、テレカがいるの?」と聞いてみた。すると凄く残念な答えが返ってきた。
「お金。」
(お金がないんか・・・)説明をきいていると、750度数テレカが残っているのでそれと交換して欲しいらしい。
私も別にお金持ちじゃないけど、女の子が夜中に男の人や知らない人に道端で話しかけるのは止めさせたい。見てて危なっかしい。
結局、千円札を一枚あげることにした。
ネットカフェでも牛丼屋でもファミレスでも行って欲しい。こんな寒い日に、そんな事してる人を見たくない。
赤い観覧車のあるこの一見平和そうな街は、若い女をもホームレスにしているのか・・・。
そう思うと、その晩は寝つきが悪かった。
・・・つづく。