迷子になった自閉症の息子が「永遠に見つからなければいいのに」―“障害児は天使”と励まされる親の苦しみ

 

 

Yahooニュース8/12に配信された、子育て本著者・講演家 立石美津子氏の記事を要約引用(青字)します。

 

私の息子は23歳で、知的障害を伴う自閉症です。幼い頃の息子はこだわりが強く、それが通らないとパニックになり、暴れ、自傷行為をし、私は疲労困憊(こんぱい)状態でした。

 

 障害のある子どもに対して、「こういう子って天使だよね」と言う人がいます。

私は息子を育てながら、決して“天使”とは思えませんでした。

 

 あるとき、息子が街中で迷子になったことがあります。私は息子を必死で探しながら、心のどこかで「永遠に見つからなければいいのに」とつぶやいていました。

 

「ひどい母親だ」と責める人もいるかもしれませんが、そのときの私の心は自然に、瞬間的にそう思ってしまったのです。

 

 障害児を育てている親に対して、「神様が与えてくれた天使」「親を選んでやってきた」と励ます人がいます。しかし、受け止める側は内心「選ばれたくなんかなかった」と思っていることもあります。

たとえ励ますつもりであったとしても。

 

「障害のある子の存在が、家族の絆となる」。

そんなテーマが時々テレビで取り上げられ、“美談”とか“感動ポルノ”とやゆされることがあります。

 

そうした家族も確かに存在するのでしょうが、子どもの障害によって夫婦間に溝ができ、離婚に至るケース、また“育てにくい子”として虐待に発展しているケースもあります。

 

「発達障害児が虐待を受けているケースは、定型発達児の4倍」というデータもあるようです。

 

 そのため、「こういう子ってピュアだよね」「天使だよね」「秘めた才能があるよね」などと言わないでほしい……そう思う親御さんもいます。たとえ励ますつもりであったとしても、です。

 

さらに、中には「障害も個性の一つだよね」と励ます人もいます。

 

そもそも障害は生まれもったものであり、染色体異常や脳の機能障害といったことが原因です。

 

性格や個性というものは障害の上に、育った家庭環境や幼稚園、保育園、学校環境、友人関係などが複雑に影響してつくられていきます。

 

 同じように「秘めた才能があるから、そこを伸ばしてみたら?」も、よく言われる言葉です。

 

言葉をかけた人は勇気づけようと、よかれと思って言っていると思うのですが、こう言われたことから“療育の鬼”と化し、“才能探し”の旅に出たり、“才能の温泉掘り”に走ってしまったりする親御さんもいます。

 

そういうときの親の顔は“眉間にシワ”の怖い顔になっていたり、子どもが思い通りにならないと残念な悲しそうな顔になっていたりするものです。

 

 また、「才能を生かした職業に就いたら?」と励まされ、「今から職業のことも心配しなくてはならないのか!」と感じ、そのプレッシャーに押しつぶされている親御さんも少なからずいます。

 

定型発達の人であっても、才能を生かして自立し、職業に生かせている人はほんの一握り。

「障害がある子は、何か秀でた才能を生かさなきゃいけない」と思う必要はないのではないかと、私は思います。

 

 

この記事に対して、障害を持つ子どもの親御さんから多くの同意するコメントが寄せられていました。

 

 

 

子どもの障害の有無に関わらず「子どもがいなければ」と考える親は意外と多いようです。

 

「我が子がかわいいと思えない」と感じる親は少なくなく、「マイナビウーマン」の調査では、約4割の母親が「子供がかわいくない」と思ったことがあると答えています。

 

子育ては非常に負担が大きい作業です。

 

発達障害や自閉症、障害を持つ子どもを育てることは、非常に大変なことが多く、特にサポートやリソースが十分でない場合、母親が非常に大きなストレスや絶望感を抱えることがあります。

 

多くの親はエネルギーを消耗し、ぼろ雑巾のように疲れ果てています。

 

子どもを愛している。

どんな困難があっても子ども支えたい!

 

いつもはそう考えていても、過度の疲労やストレスが重なると、「もう無理だ」「これ以上耐えられない」と感じることがあっても責めることはできません。

 

育児や仕事、人間関係や家事のストレスが重なると、「子どもがいなくなればいい」といった極端な思考に、一時的に繋がる場合もあるかもしれません。

 

自分の若い頃の育児を考えても、何度か「どうにでもしてくれ!」と絶望的になり投げやりな気持ちになったものです。

 

このような感情を抱えた親にとって重要なのは、適切なサポートを受けることです。

 

家族、友人、医療専門家、支援グループなど、周りからのサポートがあれば、親は自分の感情を整理し、ストレスを軽減し、より良い形で子どもと向き合えることが多いです。

 

そうした感情は、通常は親の疲れや孤立感、サポート不足からくる一時的なものです。

 

親が休息を取ったり、サポートを受けたりすることで、改善されるケースが多いです。

 

いや、それができないから苦しいのです。

 

夫婦で家事や育児を分担できたら負担軽減につながるといわれますが、これも難しい。

 

 

実際は母親が全てを一人で背負わなければならないケースが少なくないように思われます。

 

育児や家事を丸投げする夫に気持ちが離れ、離婚に至るケースは少なくありません。

 

女性は出産後のホルモンバランスの変化や生理、更年期障害と精神疾患を発症しやすいといわれます。

 

うつ病の発症率は、女性が約10-25%、男性が約5-12%とされています(男性はうつ病を抱えていてもそれを表に出さない、もしくは診断されにくい傾向があるという説がありますが)。

 

どうか自分を追い詰めないでほしいと思います。

 

 

水に溺れているときは苦しくて救いの手をさし伸ばす人がいても気づかず、その手を掴もうとしません。

 

払いのけているかもしれません。

 

なんとか自力で生き延びようともがきます。

 

気持ちが苦しい時には、他者からかけられる好意や優しい気持ちを受け止める余裕がありません。

 

そして、ますます孤立します。

 

 

子育て中の母親の中には、一人で頑張る方が楽だと考える人もいますが(まさしく私がそうでした)、人を頼り、甘えることができるようになるといいですね。

 

自分の子育てを振り返り、この人を助けたいと思わせる人たらしのテクニック(計算)があったら良かったと今考えます。

 

自分が介護を受ける身になったら、使ってみたいと考えています。

 

ご自分の心も身体もご自分で守っていただきたい。

 

まわりにある利用できるリソースを使いつくしてほしい。

 

人でも制度でも、自分が生き延びるために貪欲に利用してください!

 

利用できるリソースの情報を掴むために医療や福祉、心理の専門家を頼っていただきたい。

 

最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。