家族が自殺の可能性がある場合や、妄想や幻聴などの強い精神症状が出現し自身を傷つけたり、他人に害を及ぼすおそれがある時、周りの家族はどうしたらいいのか非常に悩み苦しみますよね。

 

こんな時、当の本人には自覚がなく、素直に相談機関や医療機関へ連れて行くことは非常に難しい場合が多いです。

 

2023年1月、18歳の高校生が、13歳の時に同意なく精神科に入院させられたことを違憲として、東京都や母親に賠償を求める訴えを起こしました。

 

 

高校生は、医療保護入院措置で強制入院させられたことが違憲・違法だと主張しています。

 

彼は10人に担がれて精神科に入院させられたと訴えており、この問題は、精神科病院の問題点を浮き彫りにするものであり、日本国政府に対して精神医療改革を求める声も高まったとされます。

 

2017年、当時13歳だった彼は、本人の同意なく精神科に強制入院させられました。この入院は、医療保護入院制度に基づいて行われたものであり、親や医師の判断で入院が決定されましたが、彼自身は精神疾患がないと感じていました (ABEMA TIMES)。

 

彼は、入院措置が彼の人権を侵害しているとし、東京都と母親を相手に1億円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

 

また、医療保護入院制度が時代遅れであり、児童相談所にとって都合の良い収容所のように扱われたと主張しています (ABEMA TIMES)。

 

弁護士を通じて、今回の入院措置が憲法に違反しているとして違憲性を訴えています。

 

日本の司法制度では、法律レベルで解決が可能な場合には憲法判断を避ける傾向があるため、この訴訟がどのように扱われるかが注目されています (gooニュース)。

 

このケースは、未成年者の権利保護や医療保護入院制度のあり方についての議論を呼び起こしています。

 

制度の見直しや人権保護の強化が求められる中で、今後の裁判の行方が注目されます。

 

 

本人が病状を理解し、治療を同意しての入院ばかりではない精神科への入院基準ですが、以下の形態があります。

 

1. 任意入院(自発的入院)

患者自身の意思で入院する形態です。

患者は自分の意志で入退院が可能であり、治療の同意も本人が行います。

最も自由度が高く、患者の権利が尊重される形態です。治療の進行に合わせて退院のタイミングも自分で決定できます。

 

2. 医療保護入院

患者が自発的に入院に同意できない場合、家族や保護者、もしくは特定の医療従事者の同意に基づいて入院させられます。

患者の安全を確保するための措置で、医師が必要と判断した場合に行われます。

患者の同意が不要なため、強制的に入院させることができますが、患者の権利保護も重要視されます。

 

3. 措置入院

精神保健福祉法に基づいて行われる強制入院の一種で、患者が自他に危害を加える恐れがある場合に、都道府県知事の指示により入院させられます。

警察や精神保健指定医の判断で行われ、特に危険性が高いと判断された場合に適用されます。

患者の安全を確保し、社会への危険を防ぐための措置です。

 

4. 緊急措置入院

急を要する場合に、一時的に強制入院させる形態です。72時間以内の短期間で、緊急的な対応が必要な状況で適用されます。

緊急性が高い状況で使用されるため、迅速に患者を保護することが目的です。

 

高校生のケースでは、患者の安全を確保するための措置で、医師が必要と判断した場合に行われる「医療保護入院」でした。

 

この「医療保護入院」は、本人の同意の有無にかかわらず、自傷他害の可能性を防ぐための入院となるため、対象となる患者さんの人権を守る意味も含めて、精神保健保護法に適応基準が定められている入院になります。

 

精神疾患があるのに、自分の病状が理解できず、精神病院への入院を拒否しているが、自傷他害などの可能性が高いため入院が必要である場合に限り、「医療保護入院」が適応されることになります。

 

しかし、本人にしてみたら訴訟を起こすほどの怒りや理不尽さを持ってしまったということですね。

 

訴訟相手が、母親とは...。

 

 

自分の安全と健康を思ってのこととは、ちょびっとでも考えなかったのかガーン

 

 

高校生が13歳の時に強制入院させられたことに対して、母親は以下のように反応しています。

 

母親は、当時の状況について、自身も息子の行動や精神状態に対する不安から入院を決定したとしています。

 

彼女は息子の行動が家庭内で制御できない状況に陥っていたため、専門的な医療の助けが必要だと考えたと述べています (ABEMA TIMES)。

 

しかし、この入院が息子の同意なしに行われたことについては、彼女も複雑な思いを抱えたとも語っています。

 

母親としては、息子の安全と健康を最優先に考えての決断でしたが、その結果が現在の訴訟につながってしまったことについて、悔いとともに複雑な感情を抱いていることがうかがえます (ABEMA TIMES)。

 

この訴訟は、医療保護入院制度の適用や、親の判断による未成年者の強制入院についての議論を呼び起こしています。

 

母親の立場としても、当時の状況において最善の選択をしたつもりであった一方で、息子の権利や意志が尊重されなかったことへの反省もあるようです (ABEMA TIMES)。

 

母親がどのように対応したら良かったのか、母親をはじめ答えられる人はいないと思います。

 

家庭内で何とかしようと抱え込んだことが良くなかったと指摘された裁判もあれば、医療機関に託したことで本人から恨まれることもあり、本当にご家族のご苦労は察するに余りあります。

 

本人の同意なしに強制入院させることは、心理的なトラウマを引き起こし、信頼関係の崩壊につながる可能性があります。

 

これにより、将来的な治療への抵抗感や不信感がさらに増すことがあります。

 

しかし、強制入院させずに放置した場合、息子の自傷行為や家庭内暴力がさらにエスカレートし、本人や家族に対するリスクが増大した可能性があります。

 

これにより、家庭内での安全が確保できなくなり、さらなる危険が伴うことが考えられます

 

強制入院は、緊急時に本人や家族の安全を迅速に確保する手段として有効だとされます。

 

専門的な治療を早期に受けることで、症状の悪化を防ぎ、安定した状態に戻る可能性があります。

 

強制入院させなかった場合のシナリオは様々ですが、リスクと利益や恩恵を慎重に比較検討することが重要です。

 

そして、精神科医以外にも、児童心理学者やカウンセラー、家族療法の専門家に相談することで、より幅広い視点からのアドバイスを受けることで最適な治療法や対応策を見つけやすくなります。

 

また、家庭訪問支援や地域の支援サービスを活用することで、家族全体の負担を軽減できます。

 

最近では「ストレスケア病棟」と呼ばれる、うつ病や摂食障害、不安障害やパニック障害、PTSDなどの症状で苦しむ患者さんのために対応する病棟も多くなり、精神科へ入院することも敷居が低くなっているかもしれません。

 

この病棟は、開放病棟でもあり、入院される多くの患者さんが任意入院のようです。

 

任意入院の場合には、外出や外泊、病院内への持ち込みなどの制限もかなり緩やかなようです。

 

一番難しくて大切なことは、悪化させないことですね。

 

最期までお読みいただき、ありがとうございました。