昨日新しい金型のトライ(試験打ち)に立ち会ってきました。

正直に言って製品設計の段階から「これはちょっと無理かも…」と思いながら製作を進めてきた訳ですが、その一方で「いやいや、案ずるより~って事もあるかもよ?」という一抹の期待を胸に成型屋さんに足を運びました。


昼過ぎにお邪魔すると一昨日持ち込んであった金型は既に成形機に取り付け済み。今回の金型はこれまでのものよりも大きいので成形機も140tサイズです。

まずは型締めと押し出しピンの動作確認。実際の仕事でもこんなに細い押し出しピンがコレほど多く入っている金型は滅多にないので少々不安だったのですが、問題なく動くようです。


いよいよ成形です。樹脂の回り具合を確認しながら諸々の成形条件を探っていく訳ですが……

一射目。

まだランナーにしか樹脂が回っていません。

二射目。

バキッ!

……成形品が割れましたorz

中途半端にショート(樹脂が回りきっていない状態)したために押し出しピンが製品を割ってしまいました。

金型には抜けなかった製品が食らいついたまま残っています。このままでは次の射出が出来ないので割れた製品を取り除く必要があります。

真鍮の棒をバーナーで炙って樹脂を取り除いていきます…って取り除いているのは成型屋さんですが。自分は傍で見ているだけ。

トライに立ち会えばよくある光景ですが、作業を見守りながら「…ひょっとして模型用のヒートペンとか半田ゴテとか使うと便利かも?」なんて思ったりもしたり。今度のトライに持って行ってみよう。

とりあえず樹脂を取り除いて三射目。

二射目の様子から樹脂量を増やしたので先程ショートしたところはちゃんと樹脂が回っています。押し出しピンもちゃんと機能して製品を押し出してくれています。しかし、設計段階から懸念していた部品には殆ど樹脂が回っていません。

「う~ん…やっぱり肉厚が薄すぎたのかも…」

四射目。

五射目。

状況は好転しません。

「…すいません。止めて下さい」

金型降ろしてもらいトラックに積んで帰路に……


不安8割期待2割ぐらいの気持ちで挑んだ1stトライでしたが散々な結果に。

実際の仕事で1stトライでここまでモノにならなければ真っ青になってすぐに修正・改造に取り掛からなくてはならないトコロですが、そこは気楽な自社所有の金型。

……トライ費さえなければ、の話ですが……

モノにならなかったとは云っても、成型屋さんには事前にペレットを乾燥にかけて貰ったり、成形機に金型を取り付けて貰ったりしているので当然何がしかの費用が発生します。

金型費以外にもこうした雑費が製品単価に上乗せされていくのです……

なんとか次のトライで組み立てられるだけのモノを出さなければ!!


失敗の原因はランナーの取り回しの悪さとゲート点数の少なさ。

かねがね販売されているプラモデルのランナーを眺める度に「よくこんな細いランナーで全部の部品に樹脂が回るよなあ……樹脂の流れには全く無頓着のように見えるけど……」などと感じておりましたが、その辺りの経験不足が今回露呈した格好になってしまいました。

普段の仕事(工業製品の樹脂部品)では「ゲート点数は少なければ少ないほど良い。スプール(樹脂注入口・・・とでも言えば良いのでしょうか?)から製品までの経路(ランナー)は短ければ短いほど良い」のが当たり前だったので、どうしてもプラモデルのように一つの部品にゲートが3つも4つもあり、しかもそれぞれのゲートがスプールから均等の距離に設置されておらず場合によっては遠回りさえしているという状況にどうしても頭が切り替えられなくてついついいつもと同じようなランナーの構成に……


フィギュアコミュニティサイト「fg」にアップしたここまでの自分の製品を見ていただいた方には判るかと思うのですが、部品とランナーのレイアウトが市販のプラモデルと比べるとかなり異質です(アンダーカットを抜く為のスライドがある事もその一因ですが)。

ここまでの三型では部品点数(一型目は3点・二型目は6点・三型目は11点。今回は20点)が少なかったことも幸いしてボロを出さずに済んでいましたが、長年かけて培われてきたプラモデルのランナーと部品のレイアウト・ゲート点数はやはり伊達ではなかったということです(おそらく市販のプラモデルではパッケージングの事も考慮してあのように部品の周囲を囲む四角い枠のランナーになったという側面もあるかとは思いますが)。


改修工事をして来週には2ndトライをしたいです。
桃色戦車工場

ランナー全景。一応プラモデルのランナーを意識してはみたのですが、金型構造上の制約もあってこんなヘンテコなランナーに・・・


桃色戦車工場
何とか形になった部品のみを使用して組み上げてみました。1/20の200Lドラム缶。

ボーナスパーツのつもりでしたが、コイツだけが無事に成形出来るとは・・・orz


桃色戦車工場

部品は2点構成。ボーナスパーツのクセにスライド使用で金型大型化の一因に……