小さな怒りと、虚しさ。それに複雑な嗜虐心が

清巳の心の中で燻っていた。


あれだけ寂しい、清巳は優しいと

私にすがりなんども抱いた青葉。


他店にいくと清巳捨てないで、と泣いた青葉


三ヶ月同棲までし、「清巳のご飯が一番美味しい」と

笑った青葉。


清巳を抱く時「出来たら結婚しよーなっ!」と

最後まで避妊具をつけなかった青葉。


あんなに何度も顔をくっつけて眠ったのに。


アナタハナゼ、ワスレテ、シマウンデスカ


ゼンブ、ウソダッタンデスネ


解っていたのに。解っていたのに。苦しい。苦しい。


青葉を憎んでしまいそうで苦しい。

人を憎む、そんな浅ましいことはしたくない。でも!


青葉が恋するのはお金だけ。

罪悪感なんてはじめからなかった。

そう気づいた時清巳の中で何かが変わった。


青葉は「隣いいですか?」と断りをいれちょこんと小動物の

ように座っている。清巳は青葉にこういった。


「ぽすぽすでみた以上ね。貴方可愛い。

ここ、休憩卓にしていいから、もっと甘えてくれたら嬉しいわ」


「本当ですかあ。青葉嬉しいにゃんにゃん!」

また小首をかしげ、恥ずかしげもなく、

両手を猫のようなポーズにする。

そして清巳にもたれかかるとあったかいーと頬をすりよせた。


「ねえ、私ワンタイしかいられないの。早いとこプラチナあけましょ。

貴方と二人きりになりたいから卓飲みよ。いい?

余ったボトルは貴方にあげる。また次来た時いれればいいんだから

転売でもしなさいよ。」


「そんなあ、清巳ちゃんに悪いよお。」等と言いながらも

初めて会ったお祝いよ。と言って見せると

ほくほくとボトルを抱えて席をたち、

「じゃあ、ロッカーにしまってくるう~と子猫のような笑顔でVIPルームを

後にした。そしてすぐ戻ってきたあと


「俺以外のと話しちゃだめなんだからねっ」


と耳元で囁いたあと、軽く頬にキスされた。




(注:休憩卓とは文字通りホストが休憩する卓

ホスト的な作業はしなくていいしお酒ものまなくていい。

だが、下心のあるお客様が申し出る事も多いので油断のならない卓。)



もう、ふっきれたわ。早いところすませましょう。

清巳は隠し持っていたオルゴオルをとりだし、螺子部分だけを

ものすごいちからで引きちぎった。手にはべっとりと、血がついていたが


何事もなかったかのようにそれをぬぐう。


そして青葉が帰ってくるのをオルゴオルとともに待ち構えるのだった。