ロシアの手巻きピックアップメーカーである、アレキサンダー・プリボラのピックアップ「Voodoo」を購入しました。プリボラは数年前に非常にリーズナブルな手巻きピックアップとして、話題になりましたよね。以前より、手巻きピックアップについて興味があったので、購入の運びとなりました。

 

1.手巻きピックアップとは?
 現代において、殆どのピックアップは機械によってコイルが巻かれていますが、一部高級メーカのピックアップや、フェンダー・カスタムショップ(のギターに載ってるPU)では、現在においても手巻き(ハンドワウンド)製法によって作られています。手巻きピックアップと聞くと、フェンダー社のピックアップ職人だった、アビゲイル・イバラ氏の名前を思い浮かべる方も少なくないと思います。


 手巻きはその字の如く、手でコイルを巻くことを意味します。機械巻とは異なり、不規則な張力や角度で巻かれるため、銅線同士の空間が増えて接地面が減り、静電容量(寄生容量)の値が下がって高音域を通しやすくなり、オープンでワイドレンジな音質傾向になる。らしいです。(コンデンサと同じように考えたら高音を通しやすいというより、低音カットの方が適当な気がしますね。どうなんでしょう。)

 

2.Alexander Pribora Voodoo

(1)購入

 今回購入したVoodooピックアップですが、2021年現在、国内には輸入代理店がないため店舗で購入はできません。フリマサイト、pribora公式ホームページ、または海外通販サイトのebayで購入の何れかとなります。私は安価でハードルの低いebayで購入しました。プリボラに興味があって英語が苦手な方は、ebayでの買い方の解説サイトもありますので、ググってもらえれば良いと思います。

 

 今回、Voodoo1セット(カバーなしタイプ)を6,300円で購入しました。安価とは聞いていましたが、気が引けるくらい安いです。ピックアップの巻き数は平均的に8000ターン程度と言われています。手巻きを謳っていますから、当然、それらを手で巻くわけです。1秒に2~3ターン巻けたとして、45分~60分オーバーです。それを材料費込みで1つ2,100円で売っているわけですから・・・

 

 という不粋な計算をしてしまいましたが、この低価格はロシアの物価に起因するものと思います。”手巻き”のアドバンテージやバロメータを考えれば、国外向けは値上げしても買う人は多そうな気がします。


(2)仕様
 仕様の詳細は公式ホームページを参照してもらえればと思います。特徴的なのはバルカンファイバー製の赤いボビンでしょうか。差し色になっててピックガードを裏返したときにオシャレに感じるかもしれません。ちなみにスタガードポールピースの段差はさほどきつくないです。

 

 また、口コミを見ると「ピックアップカバーの精度が悪く、ビス穴の位置が合わない」という情報もあったので、ピックアップカバーは別で注文しています。弦間ピッチは10.4mm(52mm)となっており、以下の製品と合致しました。しかし、ミドルピックアップのみボビンとケースの隙間がなく、少しきつめでした。手作り故、ボビンの加工精度もそんなに高くないようです。が、個人的にそこまで神経質にならなくてもいいと思います。

 

 導通確認では、以下の結果が得られました。ネックとミドルの抵抗値の誤差は5%以上ありましたが、少しパワーが増える分には全くもって文句はありませんし、手巻きを考慮すると想定の範囲内です。しかしながら、-10%とかだったらさすがに泣いてたと思います。

 

■抵抗値(公式値)

 ・ネック・・・・・6.7K(6.1K)
 ・ミドル・・・・・6.8K(6.2K)
 ・ブリッジ・・・7.0K(7.0K)

 誤差:±5.0%


(3)音質
 ・とにかく全帯域の見通しが良く、澄んでいる。

 ・レンジが広く、艶がある。

 ・ピッキングやボリューム操作の反応が良い。

 ・隙間感があり、ストレスのない出音。

 ・製品説明に違わず、ミッド~プレゼンスが良く出ている。

 ・ローミッド~ローも薄くなることはなく、バランスが良い。

 ・鈴なり感もあるが、それでいていやらしくない。

 ・激しく歪ませる用途を除き、汎用性は高い。

 ・ノイズには強くない

 

 第一印象は見通しが良いところです。ドライブさせても各帯域が変に潰れたり、滲むことなくキレイに分離します。ストレスのない、隙間感のある出音、癖がなくハイファイ傾向です。半面、見通しの悪さによる量感は感じにくいので、色気に欠けると感じる人もいるかもしれません。トーンノブの出番が増えるとも言えます。味付けは薄いので、ギター本体の鳴りの影響が色濃く出ると思います。そういった意味では、ギターを選ぶピックアップかもしれません。

 

 単音ではわずかに鈴なりが感じられ、和音ではそれが心地よく感じます。出しゃばらず、わきまえている感じです。また、本来ハリが強くてボコンと鳴りそうなフロントでも、わずかにパコっとした軽快なニュアンスが感じられます。弾いていて楽しいギターになったように思います。

 

 ピックアップ交換前、高音が強調され、低音が削れて薄くなりそうなイメージもありましたが、十分に出ています。見通しがよいこともあり、低音のコントロールはかなりしやすいんじゃないかと思います。また、ハイゲインとの相性はノイズ、パワー、レンジの観点から良いとは言えず、他に適当なものがあると思います。


3.総評

 率直に。良いです。非常に扱いやすく、演奏に応えてくれるピックアップだと思います。Alexander Pribora Voodooは手軽に手巻きピックアップを試したい方のみならず、多くの人にお勧めできるバランスの良いピックアップです。

 

おしまい☆

 

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