GW、どこへも行かず、外食は町中華の”新雅”という境遇・・・
そんなわが身の幸せを噛みしめつつ(笑)読書しました。
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地政学についての本です。
原題は 「La Defaite de L'Occident」(直訳してもそのまんま「西洋の敗北」)
つまり、日本での売れ行きを意識した意訳ではありません。
(画像はお借りしました)
折しも、世界はトランプ関税というハリケーンの只中。
チープトリックのようなトランプ氏の手の内を見透かすように”強烈なアメリカ売り”で構える金融市場。想定外の動きにトランプ氏の周辺もすくみ始めたように見えます。
2024年初頭に出たこの本の内容、結構現実味を帯びてきました。
モノが作れなくなったアメリカの病を分析して著者は言います。
「経済」とは、「育成されて能力を身につけた男女の集合体」のこと。今、ウクライナが必要とする砲弾すら生産できないでいるのは、アメリカが生産を担っていた人間を追い出してしまったからである。
モノを作らなくても生きて行ける、「ドルという不治の病」に関しては
アメリカは輸入品という点滴で生きているが、それを賄っているのは輸出ではなくドルの発行。アメリカは国債発行で貿易赤字を補填しているが、それが可能なのはドルが基軸通貨だからに他ならない。
モノを作って自分で稼いだカネじゃなく、人のカネにたかって稼ぐ労働者の比率が極端に高いことを論じて
このシステムにおける最高の職業は、莫大な富の源泉に近い銀行家、税務専門の弁護士、銀行家のロビイストなど・・・エンジニアはこの放蕩からは離れすぎている。
そしてアメリカの現状を一言で言い切ります。
真の競争が、紙幣印刷機からもたらされているとすれば、外国産業に対する国境での保護政策などで十分であるはずがない(←トランプ大統領にきかせたい)
どうやら、この紙幣印刷機による経済がフェイクであることに世界が気づき始めました。
きっかけは、
ウクライナに砲弾を供給できない
中露の超音速ミサイルに対抗できない
鉄もクルマも、とにかくまともに作れるものがない
などいろいろ。
ウクライナ戦争の終結を果たせないアメリカの現状を言い当てて
ロシアが求める条件による和平は、アメリカにとって自国の威信を失うこと。世界史におけるアメリカ時代が終わり、世界中の労働者に寄生して生きてきた能力も弱まる…アメリカの目的は「帝国の維持」
つまり西ヨーロッパ、日本、韓国、台湾に対する支配の継続。これら属国の監視にこそアメリカの物質面での生存がかかっている・・・だからこそ戦争は継続されなければならない。
小作人として働く日本、韓国、台湾あたりは、経済政策上、アメリカが持っている唯一のカード。
それだって中国にはかなわない。
歴史的な転換点で、日本(韓国、台湾も)はこのままアメリカさんの小作人でいていいのか?
そういうことを考えさせられる本です。
日本はSTEM教育が充実していて、理工系のエンジニアがよく育つ一方、歴史や哲学の教育が手薄で教養が浅く、世の中の仕組みを作る側の人財がいないように感じます。戦後の教育のせいか、自信も喪失したまま。
少なくとも、この本の著者に言われなければ、「西洋の敗北」にも気づかないわたしたち。いったいこれからどうしたらいいのでしょう・・・
この本の著者 エマニュエル・トッドさんと池上彰さんの対話