『黄色い家』 by 川上未映子 ♬「紅」X JAPAN | ☆ Pingtung Archives ☆

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60代おばちゃんの徒然です。映画やドラマ、本、受験(過去)、犬、金融・経済、持病のIgGMGUSそして台湾とテーマは支離滅裂です。ブログのきっかけは戦前の台湾生まれ(湾生)の母の故郷、台湾・屏東(Pingtung)訪問記です。♬マークは音楽付き。

川上未映子の本、初めて読みました。

図書館に予約したのはおそらく半年以上前。

ようやく回ってきました。

内容(黄色い家 / 川上 未映子【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア (kinokuniya.co.jp)より)


2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶―黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!

 

ここでいうよりリスキーな“シノギ”とは、出し子のことです。

 

”シノギ”の手口は、金持ちのカードの情報を違法にスキミングし、偽造したカードで金を引き出すというもので、国境をまたいだ大きな組織が絡んでいます。

 

この本に出てくる人たちの境遇は、みんな”親ガチャ”によってもたらされたもの。

自らの努力ではどうすることもできない身の上。

それでも生きて行くには腹が減る。お金がいる。

 

彼らの吐くおカネに対する思いがいちいち響きます。

 

    

自分の頭と体を使って稼いだやつらは、ちゃんと金に執着あるからね。貧乏人とおなじように、金について考えたことのある人間だよ。でも、家の金、親の金、先祖代々のでかい金に守られてるようなやつ、そいつらがその金をもってることには、なんの理由もない。そいつらの努力なんかいっさいない。あんたはガキの頃から金に苦労したんでしょ?あんたが貧乏だったこと、あんたにカネがなかったことに、なにか理由がある?

 

    

こういう鈍い金持ちは、自分らが鈍い金持ちでいられるための、自分らに都合のいい仕組みをつくりあげて、そのなかでぬくぬくやり続けるの。・・・そして滓になったやつは、滓になるだけの理由があったんだと思いこませる。

 

    

金は権力で、貧乏は暴力だよ・・・金を手に入れるにはどうしたらいい? 働けばいい? どこで? どんなふうに?

 

時は90年代の終わり。

舞台は東村山に始まり、雑踏にまみれた三軒茶屋、渋谷、新宿へと広がります。

 

世の中の「滓」よばわりされる者の叫びと、その犯罪を正当化する理由。

犯罪が正当化されることは永遠にないけれど、それほどの運命を背負った者の生き様は、凡人よりもどこか進化したステージにあるようにも思えます。

 

ちょっと前に読んだ、中村文則の『掏摸(スリ)』を思い起こさせます。

そういう意味でやや既視感ある内容。

重い読後感が残りました。

 

物語に登場する曲