アンソニー・ホプキンス主演『The Father 』♬「耳に残るは君の歌声」 | ☆ Pingtung Archives ☆

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60代おばちゃんの徒然です。映画やドラマ、本、受験(過去)、犬、金融・経済、持病のIgGMGUSそして台湾とテーマは支離滅裂です。ブログのきっかけは戦前の台湾生まれ(湾生)の母の故郷、台湾・屏東(Pingtung)訪問記です。♬マークは音楽付き。

Netflixを再契約したのにお目当ての韓国ドラマが不発。

で、配信リストにあったこの作品を観ました。

こちらを観てよかったです。


 

以下、ネタバレ気味です。

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概要

2020年公開のイギリス・フランス合作のドラマ映画。97分

監督はフローリアン・ゼレール。本作はゼレールが2012年に発表した戯曲『Le Père 父』であり、彼の映画監督デビュー作でもある。

父親役:アンソニー・ホプキンス 83才(アカデミー主演男優賞受賞)

娘(アン)役:オリヴィア・コールマン

 

 

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ストーリー

アンは80歳になった父親、アンソニーに認知症の兆候が見え始めたのを心配していた。アンソニーにヘルパーを付けようとしたアンだったが、気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末だった。しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンに当たることもあった。アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった。

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認知症は人類共通のテーマ。

誰もが「自分はそうはならない」「ピンピンコロリでいく」と、願望にも似た決意をもって老いの日々を送っているはず。

それでも、多くの人に「その日」はやって来る。

この映画は、「その日」を迎えた父親自身の視点で展開していきます。

途中で話の辻褄が合わなくなり、ストーリーを追えなくなった時、観ている者はそれに気づきます。

自分の認知機能が壊れていく過程を擬似体験しているような感覚。

だからこそ、その時自分がどんなに切なくて、家族をどれほど苦しめるか、がわかる映画です。

原作が戯曲だからか、認知症をとりまく当事者の息遣いが、まるで芝居を観ているような臨場感で伝わって来ます。

 

この映画はしかし、この辛いテーマをこの上なく上品でコンテンポラリーなタッチで描き切っています。

このテーマにありがちな、過剰な陰影や湿度は見当たりません。

全編に流れる澄んだ空気は、キャストとセリフ、演出家や美術さんのセンスのたまものなのでしょうか。

さりげない日常のディテールがイギリスの都市生活者の豊かさを感じさせる97分です。

 

例えば、

 

舞台となっている「フラット(マンション)」の間取りや立地

シックな壁の色

その壁にかかった絵画の数々

暗すぎず明るすぎない照明

モダンで機能的なキッチン

認知症の父や娘のアンの着ている服のデザインや色

 

・・・どこかの美術館で絵画を鑑賞しているような画面構成と色彩です。

 

 

 

結末は・・・現実的です。

 

そして、人の一生の意味を暗示するようなエンディング・・・

 

自分が認知症になったら施設に入れてもらえるよう家族に言っておこう、などと考えました。

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それにしても、娘のアン役の女優 オリヴィア・コールマン ってベティちゃんに似てる。

 

画像はお借りしました。

 

 

全編に流れるビゼーのオペラ「真珠採り」の中のアリア「耳に残るは君の歌声」