タイトルにひかれて読んだアメリカの小説。
著者は、ディーリア・オーエンズという野生動物学者。
この人↓
70才を目前にはじめて書いた小説が本作。
2019年、アメリカで一番売れた本、だそうです。
あらすじ
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舞台は1950年代~60年代のアメリカ。
ノースカロライナ州の湿地で男性の死体が発見された。人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。
6才で家族に見捨てられた時から、カイアは湿地のほとりの小屋でただひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のために彼女のもとを去っていく。以来、村人から「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしある時、村の裕福な少年チェイスが彼女に近づく・・・みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。
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動物学者である著者の、野生動物の知識がもたらすむせかえるような自然の息吹とリアリティに乗せられて、いつの間にか1950-60年代のノースカロライナの湿地にテレポートします。
↓物語の舞台といわれるディズマル湿地(Dismal Swamp)
主人公は、いわゆるホワイトトラッシュと呼ばれる白人の貧困層に生まれた女性。貧困につきものの父親の暴力によって一家離散となり、ひとり湿地に残された彼女は学校にも行かない。そして孤独の中で成長し、不審死の事件に巻き込まれます。
物語は、サスペンス、ラブストーリー、自然讃歌、(人種差別や格差などの)社会問題提起・・と様々な側面を覗かせながら、散漫になることなくいっきに読み切らせてくれます。
息もつかずに読み終え、ふと気づくと、小説の中で繰り広げられたアメリカ南部の物語は、半世紀以上を経ても全く色あせることなく繰り返されているという現実。BLM(Black Lives Matter)も白人貧困層の問題(格差社会)も、そう簡単にはなくならないことがわかっただけです。
淡々と描かれる(アメリカ)社会の病理が、余計に胸を突きます。
どこから見ても明るくはないテーマですが、全編に溢れる、50年代~60年代アメリカ南部の食事や生活の描写はカラフルなイマジネーションを掻き立てます。
✅かあさんが家出するときに着ていた、「茶色いロングスカート」「つま先がずんぐりしたワニ革風のハイヒール」
✅数々の食事のシーン
-トウモロコシ粥とラードでいためたスクランブルエッグ
-やっと焼けるようになったほろほろのコーンブレッド
-からし菜と豚の背骨とトウモロコシ粉を煮込んだシチュー
-カブの葉
-アーモンドの衣で揚げたノース・カロライナ産のマス、ワイルドライス、ホウレン草のクリームあえ、それにロールパン
✅船着き場の燃料店「ガス&ベイト」、「シング・オイル」、村の食料品店「ピグリー・ウィグリー」などでの買い物。なけなしの1ドルでカイアが手にする 豚の背脂、トウモロコシ粉、ボートの燃料などの生活必需品。
・・・など、TVドラマや映画化されたときに見るのが楽しみです。
ところで、ザリガニは鳴くのか?
その昔、ザリガニはさんざん飼いましたが、ただの一度も鳴き声なんか耳にした記憶はなく、せっせと調べました。
でも結局わからず。
本当に鳴くのか!?