イギリス発 山日記


いわずと知れたUKで一番高い山。1344m。

1344mという標高で、3776mの富士山を知る日本人はこの山をバカにしがちでではある。しかし、決して侮ってはいけない。

登山口はほぼ海抜0である。そしてこの山に山小屋や標識は皆無である。
イコール自分の力で、1日で1300m登って、1300m下りてこなくてはいけないのだ。

これがまあ意外ときつい。もし観光でスコットランドに来て、”UKで、高い山だってよ。けどたったの1344mだって。行ってみるか”なんて軽い気持ちでは行かない方がよい。

半そで、短パン姿、ザックなし(=水、食糧も持っていない)の人を結構見かけるが、そんな状態では、命の危険にも晒されてしまう時もある。
危険かと思ったら、引き返す判断能力も必要である。

下がいいぽかぽか天気であっても山頂付近は、0度近く、人が吹き飛ばされるくらいの風が吹き、雨というかみぞれみたいなものが横から殴りつけられるという天気の時もある。

前回10月に訪れた時は、それに近かった。登りはじめはいいのである。ぽかぽか陽気で、周りの登山者もほがらかな雰囲気だ。

だがしかし、標高が上がるにつれてなんだか様子がおかしくなる。まず鬱蒼とした霧がまとわりつき、なんだか湿っぽくなってくる。そして、なんだか暗い雰囲気になってきて、寒くなり、手がかじかんでくる。
この時点で、短パン、半そでグループは、グループで何か話合っている。グループのうち数名は、涙目になっていたり、少々パニクっている。

そして、山頂付近では、私ですらよろめくぐらいの風が吹き荒れ、雨が上から落ちてくるのではなく、雨、みぞれのようなものが横から砂嵐のように襲いかかってくる。この時点で、もういわゆる短パン、半そで組はほとんど見かけない。

だから、もう一度言おう。ラッキーな時は、もちろんあるが、この山には一応登山の準備(ポンチョなどではなく、雨合羽(ジャケット&ズボン)、ザック、水、少々の食糧)をしていった方がよい。

ちなみに私はそのラッキーな時も体験している。8月のとある日、たまたま快晴だったのだ。

夏休みであったからだろうか。ものすごい数の登山者であった。
行列登山。たくさんのわんこ達。
イギリス人は、犬と一緒によく登山している。ベンネイビスもこんな登山者たちで賑わう日もあるのだ。
それにしてもかわいそうな小さいわんこ達。
大きいわんこはいいのである。終始楽しそうに元気に飼い主と一緒に登っている。
しかし、小さいわんこ達は、結構きつそうだ。ぜーぜーはーはーしている小さいわんこをよく見かける。
かわいそうに。普段から登山トレーニングしているわんこなどいないだろうに。あんな小さい体でこんなところ登らされて。

わんこと一緒に登るのも日本とは違ったイギリス登山ならではの体験だ。
イギリスのわんこたちは、本当にみんなきちんと教育されている。実はイギリス人子供よりわんこ達の方がきちんと躾けられているのではなかろうか。

ちなみにイギリスのHill Walking等は、日本の登山を知っている者からすれば、景色は最高だが、なんだか歩き足りないのだ。
しかしこの山は、歩く充足感もしっかり味わせてくれる。

私は、このぼろぼろどろろどろになって、自分の限界に自分を近付けるのが好きなのだ。

天気が悪い時には、その天気に耐え、登るのに精一杯で、景色などもともと見えないが、景色など見る余裕はない。

天気の良い日は、標高がぐんぐん上がるにつれ、高度感が増し、かなり景色も楽しめる。

Ben NAVIS登山の後には、地ビールのBEN NAVISで乾杯だ。意外とおいしい。
登山後のビール。なんだかんだ言って、このために歩いている気がする。

それにしてもこの爽快感。これがあるから登山は辞められない。


Ben Navis体力レベル:3

体力度 
5:キリマンジャロレベル
(事前トレーニング、精神的準備、装備:全て気合いをいれて必要)
4:冬の燕岳レベル
(事前トレーニング、精神的準備、装備:全て必要)
3:夏の北アルプスレベル(危険地帯除く)
(事前トレーニング、精神的準備した方がよい。一通りの夏山装備が必要)
2:高尾山レベル
(日本で普通に生活しており、健康な人であれば誰でも登れるレベル)
1:ハイキングレベル
(ウォーキングシューズ、ジーンズでOKなくらい楽々レベル)