登山初日

マチャメゲート(約1800m)
~マチャメキャンプ(3033m)


ホテルで朝食を済ませ、お迎えの車に乗り、マチャメルートの出発地点、マチャメゲートへ向かう。

この時点でもまだ眠り病にかかっており、車の中で、大爆睡。 会ってまだ間もない、Kさんの素敵な肩を許可なく、かりてしまった。

マチャメゲートは、いろんな人たちでごった返していた。
多少の外国人と、ガイドやポーター達。そして見送りの人か?

私たちは、まず荷物をポーターへ預け、入山の登録をした。
自分の歳がいったいいくつかわからなくなっていることに気づく。
この時点でなんと、1才若く歳を書いていたらしいことに後で気づく。

ぼーっとしているとふと荷物にカバーをつけるのを忘れたことに気づく。
WEBで仕入れた知識によると、預けた荷物は麻袋にいれられて、雨などお構いなしに運ばれるとのこと。そのため防水対策をしなくてはいけないのだ。

本当に申し訳ないなと思いつつ、荷物にカバーをつけたいとおずおずしながら、ポーターたちのそばに行くと、なんだか一人のおにーさんがとっても当たり前に、私の荷物を探してくれた。

なんて、優しいんだ。イギリスで、こんなことしたら、SHOULD BE OKとか言われて、こんなめんどくさいことに誰も協力してくれない。

なんとか荷物を探し当てて、ザックカバーとビニール袋をかぶせることに成功した。

なんだか一緒に探してくれたポーターのにーちゃんがよかったねって感じで、イエーイって二人で喜んだ。

今思い返せば、この人はマイコだったような気がする。

こんなことに真剣に付き合ってくれたことがなんだかとてもうれしかった。

それから、スパッツをつけたり準備をした。そのときに、アシスタントガイドが登場した。

私たち4人に2人のガイドがつくのだ。なんと贅沢な。
加えて、コック1名、ポーター16人。ものすごい人数である。
この人数を聞いただけで、びっくりしたものだったが、あれだけのことをしてくれるのだから、19人でもぎりぎりだったのではないかと思う。

そして、なんとなく、イメージ的にこの約20人もの団体で行動するのかなあなんて思っていたのであったが、実際に一緒に行動するのはメイン&アシスタントガイドの2名プラス私たち4人の6人であった。

なんだかせかされて、出発となった。ランチボックスの入った袋を持って、アシスタントガイドのエドワードが先頭をきる。ほう、先頭をいくのは、メインのガイドではなく、アシスタントなのね。となんとなく思う。
ランチボックスまで持ってもらえるなんて、なんてありがたいんだろう。けどあれを持てを言われても、ザックにもうそのスペースは残されていない。

非常に緩やかな登りをゆっくりゆっくり登っていく。

おお、この速度はいいかもしれない。この速度は私向きだ。

私は、非常に歩く速度が遅いのだ。あいつには、いつも遅いと罵られているが、今回はそんなこというやつはいない。

ゆったりした登りをずっといくと、なんだか森の中に入っていく。
歩きながら、ニュージーランドの森を思い出した。
日本とは違う種類の木々があり、こけで木々が覆われ、けれどもジャングルのような感じでもない。
ニュージーランドの森だ~と一人で勝手に思う。

そして少し歩いたところで、エドワードが水場にいくという。

小川か!と思い、ついていくとなんだか、水がたまったコンクリートの貯水池みたいなところだった。
エドワードは自分の水筒にその水をいれて、おいしそうに飲んでいた。確かに水は澄んでいて、おいしそうだ。
けれどもまだ私には、そこらへんの水を飲む勇気はない。

私が水場の写真を撮っていると、エドワードが写してくれるという。
だがしかし、私は自分の写真など真剣にほしくないので、私はもうばばあだから、自分の写真はいらないと言うと、エドワードが自分よりは絶対に若いと言う。
そして、自分は51だと言い放つ。

へ?

このにーちゃんが51?そうか、やっぱり山とかで仕事をしている人は若く見えるのか、やっぱり自然相手の仕事はいいななんて、思っているとKさんが、彼は舌だしてたよ、と教えてくれた。

それからしばらく、ニュージーランドに似た森の中をゆっくりゆっくり進んでいった。

たまに雨が、ぱらぱらと降ってきたので、傘をさした。実は、出発直前にRちゃんよりキリマンジャロは傘があった方がいいよと教えてもらい、急遽荷物に投入したのであった。

1時近くになり、とうとうランチタイムとなる。だがしかし、とまって、ランチボックスが配られた時点で、ザッーとものすごい本降りとなった・・・。

はじめは、木の陰に隠れてなんとかしのいでいたのだが、雨はどんどん激しくなり、とてもランチタイムどころではなくなった。

だがしかし、食べろという。私とKさんはかろうじて、木に座ったまま身動きでいなくなっているが、RちゃんとYさんは立ったまま身動きがとれなくなっている。

ランチボックスは、まずフライドチキンと野菜のはさまったサンドイッチ、マフィン、バナナであった。
フライドチキンはおいしいのに、この雨の中で、きちんと食べることができない。パンもなんだか雨にぬれてくる。食べやすいマフィンだけがなんとなく完食できた。なんだか、ものすごく昔によく食べた味がした。

中にはいっていたジュースも飲みたかったが、ジュースまで飲む 余裕がなかった。

そうこうしている間にも、雨はじゃんじゃか降り、ランチボックスがそろそろ原型をとどめなくなってくる。このぼろぼろのランチボックスを入れるスペースが私のザックには残されていない。

多少途方にくれていると、ぐちゃぐちゃのランチボックスを引き取ってくれた・・・。本当に申し訳ない。そして、今までにこんな登山を経験したことがない。

ランチ後に多少雨は弱まったものの、まだまだ雨は降り続いていた。

今日は3000m近くのキャンプなので、高度計がそろそろ3000m近くになってきたころ、
”もうそろそろだね”
なんて話しているとRちゃんが
”いや、まだまだみたいよ。さっきどれくらいかかるか聞いたら、あと4,5時間ってエドワードが言ってたよ”
という。

へ?

そんなはずはない。私の高度計はそろそろ3000mだ。もうそろそろついておかしくない。

どうやら、これもほらふきエドワードにだまされた感じだ。

メインガイドのジャスティンによるとここからあと30分ということだった。

かつエドワードは、マサイ族で、7人の妻がいて、子供の合計が28人。自分の子供たちで学校つくりたいなどとも言っていたらしい・・・・・・。

これは真実か?


本日のキャンプ地。マチャメキャンプに到着だ。雨もなんだかやんできた。

まずキャンプ地に着いて、びっくり。
なんとテントが全て張られているのだ!テントは自分で張らなくていいのだ。

かつ私たち4人専用のトイレもあるのだ。ジャスティンが使い方を教えてくれた。

Rちゃんが大名行列だと言った。確かにそうだ。すごすぎる。

まず自分たちのテントに入ってみた。意外と広いのだ。
寝袋を2つ広げてもまだ両サイドに余裕がある。

私はテント初心者なので、テント上級者のRちゃんからいろいろ教えてもらう。

なんといってもRちゃんは、激寒の上高地での雪上テント経験者なのだ。

まずテントマットの準備だ。テントマットは、どのタイプを購入するか迷ったが、結局エアーマットにした。
事前にRちゃんが高地で空気入れると酸欠になるといっていたが、3000m地点では、まだなんとか大丈夫だった。
エアーマットはあったかいし、なんだかいい。

テントで、ごそごそ蠢いていると、
”アロー”と声がして、
洗面器を持ってきた人がいた。

おお!お湯だ。

Rちゃんのまねをして、手、顔を洗い、足をお湯につけてみた。

今日は初日でたいしたことないのだが、それでもなんだか数時間歩いた足にあったかいお湯は、極楽気分であった。

それから、マスターテントなるところに行ってみるとそこには、テーブル、いすがあり、テーブルにはテーブルクロスもかけてある。

そして、お湯、お茶、コーヒー、ココア、ミルク(粉ミルク)、砂糖がおいてあり、自由に飲めるようになっている。
なんだか、いい感じだ。

早速、キリマンジャロティーなるものが目に入り、キリマンジャロティーに、ミルク(といっても粉ミルクNIDO)と砂糖をたっぷりいれていただく。

おいしい!

なんだかこんなおいしいミルクティーを飲んだのは久しぶりのような気がする。


そして、私たちには、高山病対策のため毎日水を4リットル飲めという指令がでている。

みんながんがん水分摂取をしている。
私は、実は水分摂取が苦手なので、おいしくいただける程度にしておいた。
まあ、これで高山病がひどくなっても自分のせいだ。

今日はまだ3000mといっても日本でいうとかなり高いところまできている。私がいた山小屋は2800mぐらいだったので、もうそれを超えている。

あの山小屋でも初日は、心臓がばくばくしていたので、今日もそんな感じになるかもしれない。

ティータイムの後は、Yさんが高山病予防対策で持ってきたフリスビー大会になった。

Yさんが外ですでに一人のポーターとフリスビーをしている。
なんだ
めちゃくちゃ楽しそうだ。
私も混ぜていただいた。
フリスビーなんて、何年ぶりだろうか。

そして結構難しい。Yさんに手首の使い方を教わり、うきゃうきゃいいながら、フリスビーを楽しむ。

そして、一緒にやってくれたポーターがなんだかよいのだ。素敵な表情でフリスビーを投げてくる。
みんなその素敵な表情に釘付けだ。

そうこうしている間に、テントサイトのはずれの方が赤く染まってきている。
おお、夕日かと思って、そっちのほうを見ていると、白人系の人が手招きをしている。

近くに行ってみると夕日がちょうど沈んでしまったところだった。
うう、くやしい。もっと前に気づいていれば。
だが、まあフリスビーに夢中になっていたので仕方がない。

そうこうしているうちに夕食の時間となる。

WEBで仕入れてきた情報によると、食事はパスタやライスということだったが、今日のメニューはなんだろう。

食事、お茶は、マスターテントと呼ばれる大きなテントでさせていただく。
そして、私たち4人とガイド2名のうちどちらか1人が来る。

今日は、ジャスティンだ。そして、お湯を持ってきてくれた人がまずテーブルセッティングをしておいてくれている。
なんと!なんと紙ナプキンまで、準備されているのだ。

まずはじめはスープだ。なんだか、おいしそうだ。こんなキャンプ地で、あたたかい食事をこんな贅沢な場所でとることができるなんて、想像していたテント生活とはなんだかほど遠い。

スープの後は、メインがでてきた。
なんと、、、チップスである。そして、フィッシュ。

へ?

これはフィッシュアンドチップスではないか。ひー、こんなとこまで来て、フィッシュバンドチップス!とびっくりしているとそれにかけるベジタブルソースもでてきた。

このベジタブルソースがよかった。このソースのおかげで、フィッシュアンドチップスがご馳走になった。

けど、この食事はいったい・・・・。そして、スタッフたちの厳格な役割分担、階級。

誰がこの登山スタイルを作ったの?

イギリス?

と思わずにいられなかった。

食事後は、もう就寝だ。なんといってもキャンプ地だ。何にもすることがない。

外に出ると木々の間から、星がこぼれそうにきらめいていた。

もちろんいろんなところで、満天の星空は見てきたが、ここまでのは初めてかもしれない。

本当にすごかった。

Kさんが三脚をだしてきて、星の撮影をしている。

寒かったが、なんだかもったいなくて、すぐ寝る気になれない。

本当に、すごい星空だった。

これで、明日の天気もいいはずと思い込む私はまだ甘かった。