「われらが背きし者」 ジョン・ル・カレ

スパイ小説の巨匠 ル・カレの最新作。珍しく岩波書店から。普通は早川なんですけどね。
ル・カレの小説を読むのは久しぶりです。彼の小説のベストは、スマイリー3部作(「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」「スクールボーイ閣下」「リトル・ドラマー・ガール」)だと思いますが、これはそれに匹敵するかも。
物語はイギリス人のテニス好きの大学講師がリゾート地で謎のロシア人富豪とテニスをすることから始まります。このロシア人はマネーロンダリングをロシア人の新興富豪のためにしている人物で、最近身の危険を感じて英国への亡命をこの大学講師に託す、というところから始まります。
ル・カレのスパイ小説はひたすら地味で、ほとんどが人物の心理、会話、過去の物語で、アクションシーンは結末付近にわずかにあるだけです。この本でも、ひたすら 教師、その婚約者、亡命希望者とその複雑な家族、英国情報部でこの件を扱う工作員とその上司の官僚などのやりとりだけが描写されていきます。
それがとてもリアルかつ味わい深く、一気に読むのが惜しいぐらいで、一日一章づつゆっくり読みました。
冷戦が終わってネタがなくなったといわれているスパイ小説ですが、どんな社会にも闇の世界はあるので物語はつきない、ということをル・カレは証明しています。
結末は、いつものル・カレのような謎めいた結末です。「スクールボーイ閣下」とおなじパターンといえば、ル・カレのファンの方にはお判りでしょう。
最近のル・カレの小説を読んでなかったので読み返したいです。
- われらが背きし者/岩波書店

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