「ハーモニー」 伊藤計劃 | ロードバイクを待ちながら

「ハーモニー」 伊藤計劃

ひさしぶりに長編小説一気読み。 

「虐殺器官」につづく伊藤計劃の長編SF. 

こっちも最高の面白さでした。前作では、ナノテク、バイオテクが高度に進歩した社会での戦争の物語だったのですが、こっちは多分同じ世界のさらに未来の話。すべての人間には WatchMeという万能オンライン ナノテク医療装置が組み込まれていて、どんな病気も発病する前に治癒してしまう社会。 

国家というのはもうなくて、生府というオンライン医療サーバーが人間を管理しています。脳にうめこまれた 電話 Headphone とか、ARで他の人間の"Social 評価”が見える、とかよくできた設定です。 

主人公は、少女時代に自殺未遂をしたことのある”螺旋査察官”。戦争ではなくて「生命を軽視する行為」を取り締まりに辺境に赴いたりして、禁制品のお酒やタバコをたしなむカッコいい女性です。 

全人類が過剰に健康志向、ソーシャル指向になってしまい、強い刺激は自動的に排除されてしまう世界なのです。 

そんなところで、数千人が同時に突然自殺する、という大事件が起こり.....という話です。 

最後に題の「ハーモニー」の真の意味がわかります。 

そして、この小説は若くして亡くなったたった3冊の長編SFの最後の一冊なのです。書き終わったときに、著者は自分の死期を悟っていたようです。その意味でもこの小説の最後はいろいろ考えてしまいます。もっと沢山書いてほしかった。残念です。 

前作とともに細部までよく考えて書かれていてすばらしいです。(バクダッドが医療産業の世界の中心になっています。その理由は.....) 

「虐殺器官」とともにお勧め。ハリウッドで映画化されないかな。