それ、自由恋愛と違いますから | 小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

労働エッセイストの松井一恵です。小さい会社には小さい会社にしかできない労務管理の方法があります。
丸17年社会保険労務士として生きてきて、みんなに知ってほしいこと、未来に残したいことを書き残そうと思います。

「会社にだって、自由恋愛はあるでしょ!!!」

とは、ある会社の取締役さんのお言葉です。

この取締役さん、50代半ばの男性。独身。

「最初は、前の彼氏と別れる相談をされてたんです。きれいさっぱり忘れるために、引越ししたいというんで、マンションを探してあげて。見たいというので、ノラジョーンズの来日公演のチケットも取ってあげて、一緒に言ってきました。オイスターバーにも一緒に行きましたよ。」

とおっしゃいます。相手の女性は30代後半。同じ会社で仕事をしている営業社員。

彼女いわく、

「確かに恋愛のことで相談したことはあるんです。でも、別れる相談というのは、少し違うと思います。引越しをするといったら、マンションを探すのを手伝ってくれました。でも、お金を出すといわれたのは、お断りしたんです。正直、ちょっと気持ち悪かったので、家は探し直しました。それから、いろいろしつこく誘われて、仕方がないので何度かは一緒に出かけましたけど、お断りしたら、仕事に支障が・・・。」

いま流行の「一線を越えて」こようとした取締役に「NO!」と言ったとたん、営業会議でいわれのない叱責されたり、仕事を取り上げられたりしたので、セクハラ相談窓口に相談しに来たのだそうです。

 

一貫して、「いじめはない。業務上必要だったからそうしただけ」と取締役は言います。

「彼女のために一生懸命いろいろ便宜をはかって。僕たちは恋愛関係にあります。越える一線なんてありませんよ、お互い独身なのに」と、一歩も引きません。

 

ここで、セクシャルハラスメントの定義をおさえておきたいと思います。

職場において相手(労働者)の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言動起因するものであって、

(1)職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること、又は

(2)職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されることを意味します。(雇用機会均等法11条1項)。

 

職場での力関係を背景に、私的に便宜をはかって「断りづらく」した上で、性的関係を迫って、拒否されると仕事を取り上げた・・・整理するとそうなりますが、

「ここまでのご説明、相手さんからの言い分も聞いて、ご自分に思いあたるところはありませんか?」と聞いてみました。

返ってきた答えが「会社にだって、自由恋愛はあるでしょ!!!」

 

これはいったん仕切り直して、もう一度彼女と話してみるかなぁと思っていたら、ずっと黙って横で聞いていた社長が、

 

「お前!何人目じゃ!!」

 

と、怒鳴る。一同、びっくり。

「矢野も槙田も石川も、お前の自由恋愛で辞めたやんけ」

「知らんとおもてたんか、全部わかってるぞ!!!」

といった瞬間に、

 

「はい、すみません。その通りです」

 

と取締役。

自覚・・・あったんですね、はい。

 

教訓

利益を提供して逃げられなくするのもセクハラ。

お互い独身でもセクハラ。

ふられた腹いせに仕事取り上げたらセクハラ。

自由恋愛は社外でご自由に。