パパさん、あのね。(4) | 夜の風、あるいは羊の咆哮

夜の風、あるいは羊の咆哮

羊が毎夜、咆哮しています。






パパさん、あのね。



さいきん、かーこさぁ、


あるけるようになったじゃん?



10ぽくらいはよゆうであるけるじゃん?



だからさぁ、


すごくうれしいの。



10ぽもあるくとさぁ、


さっきまでいたところが


ずっととおくにあるの。



あれっておもしろいよね。



だって、さっきまで


そこにいたんだよ。



それがさぁ、


すぐにこっちだもんね。



ほんと、ふしぎ。



よいよいってするだけでさぁ、


すぐにママさんのところだもん。



ほんと、うれしいの。



それでさぁ、


あまりにもうれしいからさぁ、


いっぱいよいよいしてたの。



そしたらさぁ、


あたまをがーんってしちゃったの。



よいよい、で、がーん、


ほんとにいたかったの。



わたしもわけがわからないわ。



きがついたら、


あたまががーん


だもん。



いたかったの。



よいよい、がーん。


だもん。



わたしってさぁ、


あんまりなかないんだけど、


あのときはさすがにないちゃったわ。



ママさんがすぐにきてくれて


いたいのいたいのとんでいけ


してくれたんだけど、


ぜんぜんとんでいかないの。



ずっといたいままなの。



あんなのうまれてはじめてだったわ。



えーん、えーんしてたらさぁ、


いちよしいいんにつれていかれたの。



わたしあそこってきらい。



だっていつも


こわそうなおばあちゃんがいるんだもん。



こわそうなおばあちゃんがさぁ、


くちあけてとか


みみだしてとか


そんなこというんだもん。



わたし、


いちよしいいんってだいきらい。



いっぱい、えーん、えーんしてやったわ。



それでさぁ、


なにかしろいものを


おでこにはられたの。



つめたいやつね。



あれはなんだったのかなぁ、



よくわからないけど、


つめたくてしろいやつ。



パパさんなら


なにかわかるでしょ。



それをはられてさぁ、


そしたらさぁ、


だんだんといたみがなくなってきて、


すごくらくになったの。



だからね。



いまは、


だいじょうぶ。



もう、


だいじょうぶなの。





だからね。


だいじょうぶ。





パパさん、


はやく


かえってきてね。





じゃあね。


パパさん。



またね。