話の始まり↓
しあ楽1.
途中に
読みきりシリーズとして
★なな潤や
★さと輪のお話が入ったりします
なな潤&さと輪シリーズは
ちょこちょことしあ楽シリーズの中に
挟まれているので
良かったら読んでみてね☆
おさらい↓
しあ569・・・・
sio.しあ楽570 二章
その夫婦との最後の朝食は
多分、それもずっと続いていたような
特別な物じゃなく
この国では普通に毎食出るような
穀物のパン
その上にチーズ、トマト、
サバをトマトで煮たようなペーストがのせられていた
日本のチーズは黄色に近いが
そこにのせられていたのはキャラメル色をして
焼きもしていないのに
やわらかくねっとりとしたような
ヤギのチーズ
奥さんに聞けば
それはヤイトオストと言う物だと
教えてくれた
食事を済ませ、
そのまま歩き散策しながら
市内に戻るとつたえる
だからこれが本当の最後だ
「 じゃあお元気で、お世話になりました 」
「 元気で、いつでも遊びにおいで 」
ご主人の言葉に
奥さんが隣で寄り添うように
傾きをみせる
「 はい。あと、アルネがずっと愛してると伝えてほしいと 」
「 あの子が? 」
奥さんがその言葉に
何も聞かず、ただオレを見つめて
瞳に涙をにじませる
「 夏にはあの家に会いに来て欲しいと言ってました 」
「 そうか君はあの子に会えたんだね 」
「 私たちもいつか会えるかしら ・・ 」
昨夜夢に現れたアルネは
ずっと鮮明で、オレにはリアルな記憶
この世界にいない、
それさえも信じられずにいた
「 彼がはっきりと言ったんです。貴方たちに会いに来て欲しいと 」
両手をつつむように握手をしてくれ
その上に、重ねるように夫人も手を触れた
何かの応援のようだと
三人で笑い、
最後は姿が見えなくなるまで
手をふり、
何度も振り返っては
その姿を最後まで目に焼き付けていた
・・・
・・・・・
オレはハーマルの駅まで
湖につながる川沿いを目指し歩いて戻る
あの夫婦に聞いた道と
携帯で調べた地図でも、それが一番分かりやすい
もう二度とアルネに会えない
そうは思えなかった、
ただ同じ時間に出会えず
時を超え出会えた友人に敬意をはらい
彼のことを想う
そして駅が見え始めた頃
大きな風が吹き
服のどこかに付いていたのか
紫色の花びらが空へ舞い上がり
まるで”さよならまた
どう告げるかのように
見えなくなって行った
アルネが駅まで
オレのあとを付いて来てくれたような
だからオレも見上げると
「 またな!! 」
大きな声で
その風に手をふり駅の改札へと進んで行く
あの機内の中
乗り換えを間違えたこと
自分の意志のみで
長くも短くもなる休暇に
奇跡が生まれたことを感謝した
そして自分もまた
みんなの元へ、
いつでも出迎えてくれる、あの家へ戻る
アルネはどんなふうに
両親に伝えるんだろう
それを知りたい気もしたが
何となくそれを知っていたような気もする
君がずっと後ろにいて
オレが塗り込んだ時間に共に居たんだ
だから・・
いつかオレも君に会いに行くよ
そして智が夫婦の場所を去り
季節をふたつ超えた時
冬の寒さと、春の美しさの中で
またひとつ老いた夫婦は初夏からの季節を過ごす為に
レーロースへと戻り
車をしばらくホテルの近くにある
空港駐車場へと停める為に街へと訪れた
あの青年が伝えてくれた
息子からのメッセージが何を意味するのか
車を降り、一言も話すこともなく
なんども手を繋いだ
柔らかな皮膚をもつ齢になった二人は
久しぶりにその家を訪れた
鍵を開き
中へ、昼間だというのに
室内は薄暗くつるされた電灯をそっとつけると
壁一面に塗られた白さを見つめた
「 ねぇ貴方、この白い色って 」
冬に見た時には気付かなかったが
白色だけを塗り込めたと思われていた壁は
マリア像が微笑む表情に見え、
家の中に夏の陽射しが
ゆっくりと入り始め、太陽の温度が
壁を照らし始めた
するとその隅から
光の場所を始まりとし
白は薄く消え
中に薄い紫色一面の
山の傾斜に咲くヒースの丘が現れる
「 ・・ アルネ 」
夫が先にその姿を見つけた
咲き誇る花の中に、その姿はしっかりと見えた
彼は智の描いた
ヒースの丘で両親を待っていた
帰らぬ息子は自然に還され
あの地で眠っている
それを知った二人は
抱き合うと赤茶色の髪が
花の中で寝ころび空を見上げている姿を
陽が落ちて温度が下がり
再びに白い壁になるまで見ていた
塗料は熱で色を失い
また下がることで色を取り戻して
その壁をまた白さに戻した
あの青年がアルネの眠る場所をつくり
彼は両親にその姿を見せる事で、愛を伝えた
もちろん、
智の描いた絵の中には
アルネは描き込まれておらず
彼自身がその中を自分の世界だと決めたのだ
そしてその絵を見る為に
夫妻は毎年夏を楽しみにする
夢でも良いと
二度と息子に会えない
そう心の中に諦めをつくる二人には
それがどれだけの糧となったのだろう
ただの塗料と
筆のみでは生まれなかった場所が
智が夫婦と出会い、
あの家で時間を過ごしたからこそ
繋がれた奇跡を
彼自身は知ることは無かった
何故なら
彼は何度もアルネを思い出し
友人のままだと心の中に彼の場所を作っていた
だからあの家と同じように
会いたくなった時には夢の中で話し
夫婦の健康を想った
このはなしを
誰にも彼はせず
その表情はとても優しく
ハーマルからの列車の中で
ヒースの染料を袋から取り出すと
走り始めた列車の窓から
ゆっくりと風に流した
この場所がお前の場所だって
そう伝えるように
親しき友人へ
思いを馳せた
これは彼が過ごした
数日間の昔話、そしてまだ語られぬ
物語のひとつ
全て特別じゃないから
人間は良いんだ
またいつか
出会う物語を描く旅にでる
彼の時間はゆっくりと動き出し
日々の生活へと戻って行った
・・・つづく
おはようございます
まるで999のような
ラストっぽい感じ?
でも
人生全てが旅の途中のようで
特急にのることもあれば
途中下車して
何かを楽しんだり
また各駅停車にのり
わざと遅く進んだり
そんな時間な気がします
最初
夫妻の息子に
アルネという名前をつける
つもりはなくて
物語の中で
ホテルにも部屋にも出て来る
暖炉を書いていたら
向こうでは囲炉裏のことを
Arneと呼ぶとしり
彼の名前をそれに決めました
メンバーが
あの家族が遠い国で
暮らしているからこそ
全く違う場所で誰かと出会い
大切な友人を作る
それも楽しく書いてます
潤くんは
マルトーさんと
仲良しになっていたしね
ではまた来週
書けたら
物語は本篇へ
さとちゃんがあのサウナへ
入った時間に戻ります
良かったら遊びに来てね
書けない日もあるけど
平日は朝の挨拶だけだけど
この場所だけは変わらず
私が望む彼らの時間が流れています
ただの
願望で妄想で
でも大好きな空間です
では今日も良い一日を♪
またね
なう