今度は時間があまります

前のバンドがアコギで撤収が早いのと鍵盤セットは移動だけで済んだので転換に余裕がありました。音合わせとは逆に時間をもてあまします。ギタリストが声をかけました。


「もう始めちゃおうか」

「いいすよ」


ギタリストが店長さんに告げます。

「もう始めちゃっていいですか」

「でもあと二分なので。バンド紹介もあるし」

店長さんは進行と照明を兼ねています。結局店長さんにお任せして定刻通りに始めました。


音量に苦労

音合わせはしたのですが、いきなり一曲目の出だしから鍵盤が大音量です。二曲目の「トルネイド」は音合わせできなかったので予想で音量ダイヤルを合わせたらさらに大きい。砂嵐は飛ばないし途中のメロディはでたらめ。ベーシストから苦情が出ました。


「音が大きいよ。耳が痛い」

「大きいんですよ」


ベーシストは嫌そうな顔をして耳を押さえていますが私も分かってるんですよ。手を出せるところは変えながら弾いてます。しかし弾きながらなので限度ってものがあるんです。以降の曲は多少ましでしたが頻繁にダイヤルをひねらざるを得ません。今回は音量操作に苦労しました。演奏はいつもにも増して惨憺たる出来です。


しでかしました

撤収を急ぐあまり、うっかりPAさんに尋ねずにケーブルを二本抜いてしまいました。途端にボンッ!という音が。ギタリストから注意されました。


「ダメだよー。勝手に抜いちゃ」

「すいません」


また接続し直します。今さら遅いですけどね。PAさんは相変わらず無言です。次以降のバンドの鍵盤は微かに聴こえる程度でしたがPAさんか演奏者の意向のようです。こちらも鍵盤と頭に機材を落とされたので痛み分けということで?特に会場からは何も咎められませんでした。撤収は一人で片付けたのでステージと楽屋を四往復です。次のバンドの方にすみませんと言いながら後始末をしました。客席へ戻ってからのベーシストの発言です。


「◯◯(私の本名)ちゃんの後ろにいると面白いね」


今回は特にそうでしょうね。ひっきりなしに機械を操作しながら弾いてましたから。傾斜がついているので客席からは手の動きがあまり見えません。


ライブにはレトロロックバンドのベーシストをお客さんに呼んでいました。


「ところで『Love hurts(注)』どう?」

「すいません、まだ全然手をつけていません。明日休みなんでやります」


ベーシストは親指を上に立てて拳を握ってみせました。私は翌日こんな音色と演奏でどうすか?というデモ演奏の映像を送信しました。写真は二枚ともレトロロックバンドのベーシストが撮影したものです。


注:オリジナルは1960年のエヴァリーブラザーズ。カバー盤はナザレス、ジョーン・ジェット、キース・リチャーズ、ロッド・スチュワート等。