遅刻しました

定刻に間に合う時間に会場最寄り駅へ到着しました。ところが駅へ迎えに来てくれるはずのベーシストが20分待っても現れません。音合わせに間に合わないのでもう出ますとLINEに言い残して改札を離れました。


エレベーターの場所は確かこっちの方だったかなと思い出しながら荷物を押します。前回同じ会場に来た際の行き帰りは別のエレベーターでした。帰りは夜間。そのため記憶が曖昧です。見つけたデッキ端のエレベーターで地上に降ります。見たことのない景色だな。記憶では確かロータリーからまっすぐだった。道路を渡ってそれらしい道を進みました。線路が右にあります。明らかに違う。スマホのスクショ地図を確認すると経路では線路に対して直角です。90度間違えました。地図を見ても複雑でどの通りか解りません。とりあえずメルカトル方式だ。方角が正しければ目的地に着けるという海図を応用です。陸地ですが曲面を気にする面積ではありません。

進んで行くうちに既視感のある橋が見えました。橋のたもとまで10m程道路全体が粉砕されています。ガタガタでキャリーカートが通りにくい。工事中の看板もありません。何があったんだ。


会場建物入口の段差三段を引っ張り上げてエレベーターに乗り込み、やっと到着です。


「遅くなりました」

「あっ、来た来た」

「◇◇(ベーシスト)さんは?」

「いるよ」

「申し訳ない。出遅れた」


ベーシストのほうが先に着いていました。一つ前のバンドの音合わせはとっくに始まっています。


設置

今回は自前のスタンドです。私が楽器やケーブル類等を出す間、ギタリストが楽屋で組み立てます。ギタリストが尋ねました。


「これ(高さ調整ギア)どこへ合わせたらいいの?」

「黄色が立ち(弾き)で一つ下が座り弾きです」

「へえー、なるほどー」

私が自分で高さを調整しました。以降の作業はギタリストに任せます。ギタリストがまた尋ねました。


「これ、入り口通れるかな」

「80㎝あれば通れますよ」


ステージ袖はどこでも狭いですが意外と通れます。会場スタッフの方に了解を取り、鍵盤二台はステージ袖へ一旦置きました。スタッフの方がスタンドを置いてバミ(ガムテープで床に目印をする)っている姿を横目にnordを取りだそうとしゃがみます。ソフトケースを開けている最中にスタッフの方が上の方へ手を伸ばしました。ガンガンッ!上から硬い物体が落ちてきて、大きな音で額と鍵盤面に当たりました。


「あっ、ごめんなさいっ。痛かったですか」

「痛かったですよ。頭に当たりました。それよりも鍵盤が…」


一気に気分はどんよりです。何とか気を取り直し鍵盤を二台載せます。即PAさんがケーブル類を接続しました。あれ?


「何で立ち弾きの高さになってんの?」

「▲▲(ギタリスト)がやった」


ベーシストが暴露します。ギタリストはステージにいません。おそらく楽屋です。


「すみません。高さが違うので一旦降ろします。手伝って頂けますか」


ケーブル類がついたまま鍵盤二台をPAさんと二人がかりでそろそろと床へ降ろします。上段の中ステーを緩めて組み立てたまま位置を下げました。鍵盤が設置できるとベーシストが背後から声をかけます。


「ねえ、鍵盤もっと前へ出られない?」

「ええっ、これ以上前へ出るの?」


店長さんの了承を得て私とPAさんで鍵盤を前進させます。会場側のバミりは無視です。

アクシデントが重なって音合わせの時間が相当削られています。今回のPAさんはPAブースにいる時に一切発言のない方です。そして鍵盤音量はかなり大きめ設定です。時間がない上スムーズに進まず、六曲中三曲しか音合わせができませんでした。先ほど硬い物体がヒットした鍵盤は今回使う場所に関しては問題なく動作しました。

我々は逆リハの二番手です。次の音合わせはトップのアコギインストデュオ。予想通り二段鍵盤は冒頭写真の状態で待機です。


額に内出血はありませんが、少々膨らんでまだ痛みます。