会いたいと思う人に会うとき、幾度となく繰り返したことであっても、やはり浮足立ってしまう。時の流れをゆるやかに感じる。手持ち無沙汰な時間ができる。何を話そうかと、頬を緩ませながら考えてしまう。
そんな想いなら、俺は幾らでも噛み締めていたい。
違う。
望まない場所へ行かなければいけない時。
望まない人間と会わなければならない時。
望まない事をしなければならない時。
知らされた瞬間から、それが終わる日までに心に巣食う感情が、俺には許せない。
新たな環境は、俺に活力と共に傲慢を与えた。
冷水を浴びせられて現実に引き戻されれば、故郷には唯一人の盟友を除いてなんの未練もないことを噛み締める。俺は、俺を知る人がいない所に行きたかった。選択は誤らなかった。それでも、最後の鎖だけは切れない。この身を繋いでいる命綱で、この身を生かしている管。
俺は。