Spica(14) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

丹波篠山は4月の終わりとはいえ朝晩はまだ冷える。

 

父が東京に行っている間は叔母家族に助けてもらって一人で農作業をする。

 

自分が東京に行っている間はこうやって父もひとりでやっていたのかと思うと申し訳ない気持ちが先立つ。

 

父が耳を悪くして調律の仕事を辞めたのは4年前。

 

当初は片耳がほとんど聞こえない状態になり、普段の生活にもやや支障は出た。

 

一人で出歩くこともなくなった。

 

それでも治療の末徐々に良くなり、今は微妙な音は聞き取れないものの生活に支障がなくなった。

 

今回耳を悪くして初めての遠出。

 

父が高野のパーティーに行く、と言ったことはやや驚きだった。

 

勧めてはみたもののこれまでの父なら絶対に断ったはず。

 

父の中で何かの変化が起きている気もした。

 

 

 

 

結局おれは中途半端なことしかできない。

 

初音はそろそろ収穫終わりのネギ畑を整えた。

 

カフェレストランは11月オープン。

 

自分が任された仕事は7月には終わる。

 

そうしたらまたここでいつもの生活が始まる。

 

そっと土に触れた。

 

春の青空が反射する。

 

顔を上げると見慣れた山々、川の音、鳥のさえずり。

 

やっぱりここが好きだ。

 

同級生たちはここを離れて都会に行ってしまうとほとんどもう帰ってこない。

 

東京に行っていた頃、最初は自分も楽しくて。

 

楽しすぎて。

 

ここに帰れなくなったらどうしよう、とさえ思った。

 

 

 

午後になり父から駅に到着したという連絡をもらい車で迎えに行った。

 

「どやった?」

 

初音は荷物を積み込みながら開口一番聞いた。

 

「ああ。よかったで。天音も。高野社長からパーティーにもって言われて少し顔出させてもらった、」

 

助手席に乗り込みながらそう言われ

 

「え、」

 

さすがに驚いた。

 

天音の仕事ぶりを見たら帰ってくる、と言っていたけれどまさかパーティーに??

 

ずっと高野家と距離を置いてきた父からすると信じがたかった。

 

「まあ。少しで帰らしてもらったけどな。」

 

「お母ちゃんとは。会うたの・・?」

 

少しドキドキしながら聞いた。

 

「ああ。ちゃんと話もした。元気そうで安心した。天音とこうやって関わられて嬉しそうやった。天音に打ち明けて・・良かったって思った、」

 

「・・そう、」

 

エンジンをかけた。

 

「それで。昨日のうちに新幹線に乗って浜松に行ったんや、」

 

「は??」

 

サイドブレーキを外そうとしたがびっくりして手を止めた。

 

「浜松に一泊して。朝一でお父ちゃんが前に勤めてたHIRAIのピアノ工場に行ったんや、」

 

父は穏やかにそう言った。

 

父の中で「何か」が変化しているようです・・

 

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