Arcturus(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

でも母はそのまま芸能界からフェードアウトした。

 

真緒はコップをカタンと置いた。

 

「オファーの方はひっきりなしにあったようですよ。直接の電話も結構ありましたし。」

 

美和子はオーブンから美味しそうなパイ包み焼きを慎重に取り出した。

 

「お父さんも反対だったのかな?」

 

「いいえ。好きにしていいって言われてると。でも奥様はもう女優はやめるって決意なさってて。」

 

「お芝居、好きだったんだろうに。」

 

「そうでしょうけど。家庭に入ることを選んだんでしょう。とにかく結婚前までドラマだ映画だCMだって引っ張りだこだったんですから。休みもなくお仕事されていて。大変な世界ですからね、」

 

「まあ・・、」

 

今は芸能界だって結婚して子育てが一段落したら復帰する女優たちはたくさんいる。

 

子供たちの世話も頼める状況であっても母はその道を選ばなかった。

 

よくよく考えたらすごいことだ。

 

母は特に他に打ち込むものもなく、とにかく毎日をのんびりとすごしているだけに見えたのに。

 

真緒は今さらながら母の気持ちが少し理解できずにいた。

 

ひょっとしてこのあたしのやる気のなさは母親譲りなのでは・・

 

などと考えたりしてしまった・・

 

 

 

はあああ、なんとか終わった・・

 

天音は無事コンコールを終えてホッとして控室の椅子でぐったりしていた。

 

そして天井を見ながら

 

 

優勝した人。すごく良かったなあ。 

 

リストの『ハンガリー狂詩曲第2番』

 

おれが調律した音かーー

 

って思ったらホントさらに刺さって。

 

 

するとノックの音がした。

 

「はい?」

 

体を起こすと、母が荷物を持って入ってきた。

 

「ご苦労様。とてもいいコンクールになったわ。」

 

「あ、いえ・・」

 

「よかったら。直さんと一緒にパーティーにいらっしゃいな。たくさんお客様がいらっしゃるから。誰がどうとか気にする人なんかいないわ、」

 

「や・・。 それは。 第一おれスーツも持ってないし、」

 

としり込みをすると母はその荷物を置いて

 

「スーツ。初音が前に東京で仕事していた時に作ってあげたものなの。帰る時に返されちゃったけどね、」

 

そこからハンガーに掛けられたスーツを取り出した。

 

「兄ちゃんの・・?」

 

「うーん。天音には少し大きいかしら。裾と袖口を簡単に直せば大丈夫じゃない?」

 

それを天音に宛がった。

 

「いやいやいや。ホント、お父ちゃんも絶対嫌やって言うと思うし、」

 

それにしり込みをしてしまう。

 

そこに

 

「ご苦労さんやったな、」

 

父もやってきた。

 

「あ、ああ、うん・・」

 

もう色んなことで頭がパンパンだった。

 

「ねえ。直さんも天音と一緒にパーティーにいらしてくれない?ほら天音には初音に作ってあげたスーツ。ちょっと大きいけどすぐ直せるから、」

 

母が気軽に父も誘ったりして。

 

もうドキドキだった。

 

とまどう真緒とうらはらに。コンクールも無事終えて天音は余韻に浸っておりましたが・・

 

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