ついこの間、いきなり
母
とカミングアウトされて。
いきなり
なー、お母ちゃん~
なんて話もかけられんしな・・
天音は距離感を迷っていた。
すると
「直さんはコンクールを会場から見ていくって。もうそっちに行ったわ、」
母の方から話しかけてきた。
「あー・・そうスか、」
敬語かタメ語か迷う。
「夜のパーティーに。お父さんと一緒に来ない?」
「え、」
「兄さん・・伯父さん夫妻もあなたたちにぜひって言ってくれてる。でも。直さんが来てくれてよかった。初音にはぜひって言ったんだけど。絶対に来てくれないと思っていたから。天音のことが気になったのね、きっと。」
元夫のことを
直さん
と優しく呼ぶ。
本当に二人は夫婦だったのだ、と思い知る。
「あのう、」
そして遠慮気味に話しかけた。
「なあに?」
「・・変なこと言っちゃうかもなんですけど、」
この前置きに母は首を傾げた。
「もう一度。お父ちゃんとやり直すってことは。ありえないんでしょうか。」
「え、」
その言葉に母は固まってしまった。
「や。お母さんの病気のことはお父ちゃんから聞いたし。今の状況でそんなんあり得ないってわかってるんですけど。なんか。すごく・・今もお父ちゃんのこと思ってるっていうか、そんな感じがしちゃったもんで、」
何となくの間。
天音はこんなことを軽々しく口にしたことを少し後悔した。
母はふっと微笑んだあと真剣な表情で
「直さんと結婚したことを後悔したことはないのよ。これは本当。今も心療内科に通っているんだけど・・本当に情けない話、もうあそこに住むことはできない、と思うの、」
天音の目を見た。
天音はその答えに少し驚いたように瞬きをした。
「ごめんなさい。本当に自分の弱さが情けない。今もたまにね。あの時のことを夢に見るの。目が覚めると震える。直さんや初音や天音のことを愛している気持ちはもちろんある。でも・・」
もうあそこには住めない
そのワードが何だかショックだった。
「ごめんね。こんなこと言って。でも病気が良くなって普通に生活ができるようになって。兄が再婚を勧めてきたのだけれど。・・受け入れられなかった。直さん以上に愛せる自信なかったから。直さん以上の人、いないって思ってるから。」
ああ
きっと。
愛する夫や子供がいて。
でもそこに住むという気持ちって全く別物で。
この人なりにそのジレンマで心を病んでしまったのかもしれないな、
天音はすぐにそう受け入れた。
もうあそこには住めない、と言われ天音はややショックを受けますが母の父への愛情が亡くなったことではないと知り・・
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