電話を切ったあと、後ろに真緒がいることに気づき
「あ、」
少し慌てた。
「あっと・・。 初音さんはお酒弱いんですか?あんまり飲まないから・・」
真緒も慌てて話題を振った。
「いえ。・・まあ普通に飲めます。なんかいつもごちそうになって申し訳ないので、」
「何言ってんですか。全然遠慮なんかしないで下さい。天音くんガンガン呑んでますよ、」
と笑った。
「ホント。図々しいので。叱ってやってください、」
初音も笑った。
ふっと会話が途切れた時
「・・着物、ええ色でしたね。」
初音が言った。
「え、」
「何とも言えない山吹色と桜色と少しグレーも混じったような。ありそうでない色で。 お似合いでしたよ、」
そんな風に言われてかあっと顔を赤くした。
「あ・・ありがとうございます。 あの着物、父が母に結婚前にプレゼントしたものだそうで。母はその時まだ20代前半だったんで・・ちょっと若いかなーって気おくれしたんですけど。母は結婚後は表に出ることを嫌って、ホントああいう着物を着る場にも行かなくて。設え甲斐がないっていうか・・・」
真緒は訊かれてもないことをベラベラと話してしまった。
「・・これから。会長ご夫妻のご名代として。公の場に行くことも・・あるんでしょうね。」
そんな風に言われて
「あ、あたしは。名代もなにも。なれないです。兄や義姉がいますし。今日は兄があたしも仕事をし始めたのでついでに連れて行ってくれたようなもんで。親の威光は利用したくないですけど世間の人たちはやっぱりそういう目で見ます。だから・・余計前に出たくないっていうか。」
彼から目を逸らすように言い返してしまった。
「でも。やっぱりあなたには『北都の娘』という説得力がある。確かに重いでしょうがカリスマ性とはそういうものです。もっと利用してもいいんじゃないですか、」
何だか初音がいつもと違う気がして
「何かあったんですか?」
真緒は思わず聞いてしまった。
「え、」
「・・いつもの初音さんと少し違うような。いつもならそんなこと絶対言わない・・」
そう言われて少しハッとして口を噤んでしまった。
「ぼくは。そんなにいい人間でもなんでもないです。いつもと違う、というのなら。これがホントの自分かもしれません。」
俯いて彼女から目を逸らしまたリビングへと戻ってしまった。
なんとなくいい雰囲気でしたが初音は自分から心を閉ざし・・
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