【これまでのおはなし】
北都家の離婚経験アリの末娘・真緒は兄の真太郎宅に下宿をしている野々村天音の兄・初音と出会います。
北都の関連会社NCの新しく出店するカフェレストランの仕事をすることになった二人。
何となくお互い意識するようになる中、真緒の前夫である祐介が突然北都家にやってきて彼女の両親に『本当』の離婚理由を話しにやってきました・・
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真緒はさっさと車の助手席に乗り込んだ。
初音は慌てて廊下に持ってきた荷物を置いて再び外に出て車に乗り込む。
真緒の表情は能面のように何の感情もないようだった。
彼女の顔を目だけで追ってエンジンのスイッチを押した。
再び車内にジャズが流れ始める。
しかしさきほどのような会話はなかった。
彼女から何も話をしないのに自分から話しかけるわけにもいかないと初音は何も言えなかった。
目的地の家具工場に向かって半分くらい走った所で
「今日。寒いですよね・・」
真緒がボソっとそう言った。
少しドキっとした。
「・・夜は。今季一番の寒さだって。天気予報で言ってました、」
とだけ答えた。
そのあとまた会話が途切れた。
家具工場ではカフェに設置するテーブルや椅子などのサンプルが出来上がっていた。そのほかインテリアのための食器の棚や小さなテーブルなどを二人で見た。
「ここにも売り物の小物を置く台を設置したいですよね、」
真緒はなんでもなかったかのように仕事をつづけた。
「この材質よくないですか?」
意見を求められて
「あ・・そうですね。色合いも統一感あるし、」
慌てて頭を仕事モードに切り替えた。
いや
切り替えようと思っても自分の頭の中のどこかでさっきの情景を整理している自分にも気づいていた。
してはいけない
そう思う自分もいたりして正直仕事のことを一番に考えることが難しい。
だけど自分の意識の外ですべてを繋げてしまっていた。
「真緒。よく私たちに何も言わずにずっと我慢したわね・・」
吉岡が帰った後ゆかりはぽつりと言った。
「我慢・・だったのか。消したかったのか。だけど・・祐介くんの背徳感は我々にはわからないほどのものだったと思う。真緒にはかわいそうなことになったけれど。・・どちらも不幸だ。」
北都はお茶にそっと口をつけた。
そのあと二人は何となく黙ったままになり沈黙だけが低く淀んだ。
「このカトラリーボックスは明日高原さんに見てもらいたいから。あとのサンプルは送ってもらうようにしましょう。」
「はい、」
初音は黙ってボックスの入った箱を車に積み込んだ。
冬の夕暮れは短く、もうあたりは暗くなり始めていた。
東京湾に近いこの工場は時折吹く風に何となく潮の香りがあって
飛行場に近いこともあって飛行機が点滅を繰り返しながら離発着するのが見えた。
真緒はふっと夜空を見上げた。
真緒の離婚理由を初音は偶然聞いてしまいます。
彼女はそのまま何もなかったかのように仕事をし始めますが・・
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