瑠依がサックスをやりはじめたきっかけはあの純太のサックスを見つけたことに違いないのだけれど。
才能を発揮し始めたのは何より彼がサックスが本当に好きで夢中になれるものだったから、という以外なんでもない気がした。
始めは
やはり純太さんの血を引いているのだろうか
と思ったりもしたけれど、努力を重ねてどんどん上達する瑠依を見ているうちにそんなこともどうでもよくなっていた。
子供が好きなことに没頭する姿がこんなにも親として嬉しいものなのか、と。
瑠依は血の繋がりなど何も関係ないことを自分の力で証明したいのかもしれない。
葦切は良く晴れた窓の外を見た。
「えー、コンクールに?」
さくらは葦切に食事を運んできた。
「さくらさんに連絡なかったですか、」
「いや別に。 そうかー。 やる気になったんですねー。 よかった、」
「もう。 見守るしかないですね。 親は何もできない、」
「自分が瑠依くんぐらいの年の頃考えると。 まあ、好き勝手やってましたからね。 しょうがないです、」
さくらは彼の前に座った。
「・・ぼくも。 そうですね、」
瑠依の年の頃は、東京で純太と祐美と3人で暮らして。
遊んでばかりで。
そう思うと息子の立派さが誇らしい。
ベビーベッドでメリーを見ながらひとりで手を伸ばして遊ぶ一楓を見た。
「一楓も。 夢中になれることをやってほしいですね。 いや・・何もなくても。 毎日楽しく過ごしてほしい、」
葦切はつくづく言った。
「ま。 あたしの子なんで。 絶対好き勝手やると思いますけどね、」
さくらがかぶせ気味に言ってきたので笑ってしまった。
「本格的に保育園探しに頑張ろうと思って。 そろそろあたしも仕事復帰したいし。 年度替わりじゃないと難しいらしいんですけど。 なんとか。 前から少しずつ役所とかに出かけてたんですけど・・ 無認可でもいい所ならしょうがないか、と・・」
「え、もうですか?」
「一楓もそろそろ4か月ですからね。 ところによっては3か月から預かってくれるところもあるんです。なかなか見つからなかったら、事務所に連れて行こうかと思ってたところで、」
「赤ん坊は大人の思うようにならないですよ、」
「少しの時間でも。 レッスンできたらって思って。 受験もそろそろ本格的に始まるし。」
「保育園はぼくも探してみます。」
「よっしゃ。 やるぞ~~! なんかようやくやる気みなぎって来た~~~」
さくらの明るい声に葦切は救われる思いに溢れた。
葦切は瑠依の決心を誇らしく思います・・
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