「ほんとう・・?」
さくらは首を傾げた。
「瑠依くんって・・ホント明るくて人懐っこくて。すごく懐に入って来るのが上手な人です。 でも・・自分が他人に踏み込まれるとすごく扉を閉じるのが早いっていうか。 うまく言えないんですけど、ここからは入れないっていう何かがあって、」
小和はぽつりぽつりと話し始めた。
さくらはその小和の『違和感』の正体に気づいていたけれど、言葉は飲み込んだ。
「・・あたしねえ。恋愛に関して難しいとか悩んだりとか。あんまりしたことなかったのよ、」
少し話を変えるようにさくらは話し始めた。
「・・設楽さんと出会う前は。」
そしてまっすぐに小和を見た。
「最初はただ『好き』って気持ちだけで胸がいっぱいで。 何も望んだりしないって思うけど。気がついたら『どうやったら彼の心をつなぎとめておけるか』ばかり考えるようになった。 ショパコンで2位になって。 彼が世界の一流ピアニストとして認められたあとにつきあうようになったんだけど、難しい人でね。 それこそ最後の最後まであたしに素顔を見せる人じゃなかった。とにかく彼を繋ぎとめることと、ピアニスト設楽啓輔を支えることだけ考えて生きてた。彼にはあたししかいないって思った。ひょっとして自分が彼にとって都合のいいだけの女なんじゃないかってうっすら気づいてたんだけど、少しでも優しくされたりするとそれだけで嬉しくて。 今考えるとホントに愛されてたのかも疑問って感じで。でもね・・その時は全然気づかないのよ。」
さくらはふと微笑んだ。
「彼と結婚したかった。 もう30も半ば近かったし、2年以上付き合ったし。 そんな風に思ってた頃。 設楽さん、昔の恋人の奏のお母さん、梓さんと再会したの。 自分が知らない間に子供までいて、相当ショックだったみたい。 最初は認知するだけでって思ったらしいけど。 啓輔さん、奏にピアノをやらせてた梓さんの気持ちに打たれたのかな。 どんどん二人に傾倒していったみたい。あたしには突然『昔の恋人に子供がいた。 さくらとの未来はもう考えられない』って、一方的に言われて。 もう・・ショックどころの騒ぎじゃなくてねー。 こっちはNYについていく準備までしてたっていうのに。」
小和はさくらの話をジッと聴き入っていた。
瑠依への違和感を口にする小和にさくらは昔の話をします・・
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