南は、ハアっとため息をついて
「・・あんたって人は・・」
思いっきり脱力して、そこにあった椅子にどっと座りこんでしまった。
自分の推理が『図星』と確信した志藤は
「バチが当たったんや! まったく!」
吐き捨てるように言った。
「・・いや。 今時。 高校生カップルでなんもないとか? 本気で思ってへんよね? あたしから見てもな。 あの二人はほんまにつよ~く愛し合ってるってわかる。 本気でお互いを思ってつきあってるってわかる。 奏はピアノにのめりこむとなんも見えなくなるタチやし、このままウィーンに行ったらいつ帰ってくるかもわからん。 ひなたはそれを承知でジッと耐えてるんやで? 旅行くらい! なんやねん。 ほんまに!!」
南は開き直って志藤に詰め寄った。
「ま。ひなたから『友達と旅行』って言われた時点で何となく気づいてたけどな。いちおう知らんぷりしたったけどな!あのまま二人が箱根行って戻ってきたら呼びつけて目の前で正座させてめっちゃ説教したろって思ったけどな!」
志藤は語気を荒めた。
そして
「・・そんなもんをなあ。 大人がセッティングしてどうすんねん! 二人がどんくらいのつきあいかくらいはとっくにわかってる! 旅行とか! 高校生の分際で!」
怒りを南にぶつけた。
「自分なんかどうせ高校生の時なんかもっとすごいことしてたやろ! ほんまに頭カタイわ!」
「そんなんはどうでもええ! しっかも・・一泊4~5万するトコ! 高校生のガキにそんなトコあてがうな!100年早い! 自分の金でそんなもん行かせろ! 奏に! そんな施しをするな!」
南はハッとした。
「たかが。 ジャパコン獲ったくらいや。 あいつはこれからもどんどん大きくなっていくんや。 そのためのスタートに立ったにすぎない。恋愛に現抜かしてる場合か! 才能あるヤツなんかなんぼでもいる。でも、奏にはピアノにストイックに打ち込む才能がある!そういうやつはいつか世界のトップに行く! 」
怖いくらいの形相でそう言われて
さすがの南も黙り込んでしまった。
「・・行かれへんでよかったわ、」
志藤は吐き捨てるようにそう言って休憩室を出て行ってしまった。
「・・行くまでにまだ日にちある。 その前にどこか行こう。 泊りは・・無理だけど、」
奏は優しい声でひなたに言った。
「・・うん、」
ひなたはようやく涙が収まって堪えるように頷いた。
「今のおれたちは。 もっとふさわしいトコ。 あるかもしれない、」
「え・・」
「高級なホテルじゃなくて。 身の丈に合ったところ・・」
ひなたは熱でボーっとしながらもその意味を考えた。
志藤は二人の身の丈に合わない旅行に憤慨しておりました・・そして奏は。
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